ジョナサン・エメット作、ヴァネッサ・キャバン絵、おびかゆうこ訳の『ぼく、おつきさまがほしいんだ』(徳間書店、2002年発行)は、イギリス発の絵本で、原題は「Bringing Down the Moon」です。主人公は、はじめてお月さまを見たもぐら。 “ほしい!”気持ちが抑えられず、木に登ったり、ドングリを投げたり大奮闘!仲間から「無理だよ」と言われても挑み続け、とうとう…?その健気さとキラキラする月の美しさに、最後はほっこり安心。季節感ある夜の描写と、やんちゃなもぐらと友だちの愛らしい表情がめちゃくちゃいい。秋〜冬にぴったりのほっこり絵本!
略歴
ジョナサン・エメット
ジョナサン・エメット(Jonathan Emmett)は、1965年イギリス・レスター生まれ。子どもの頃からモーリス・センダックやロアルド・ダールに影響を受け、14歳で作家志望に。大学では建築を学び、一度は建築家として働きながら執筆も。1999年に『Dinosaurs After Dark』などで絵本デビュー。人気作に『ぼく、おつきさまがほしいんだ』や『No Place Like Home』など「もぐらと仲間たち」シリーズがあり、ポップアップブックのデザイナーとしても活躍中。
ヴァネッサ・キャバン(絵)
ヴァネッサ・キャバン(Vanessa Cabban)は1971年イギリス生まれ。ご両親の仕事の都合でアフリカ、スペイン、ベルギー、アメリカなど多国で育ちました。ブライトン大学で優秀賞を受賞し、王立芸術学院で博士号取得。1999年に初の絵本『Love is a Handful of Honey』で出版デビュー。その後、エメット氏との初共作『ぼく、おつきさまがほしいんだ』が話題となり、『もりのおくでおやすみなさい』など数々の絵本を手掛けました。残念ながら、最後の共作『A Spot of Bother』出版直前に永眠されました。
おびか ゆうこ(訳)
おびかゆうこさんは、国際基督教大学語学科を卒業後、出版社勤務、ドイツ留学を経て翻訳家に。『クリスティーナとおおきなはこ』や『かあさん ふくろう』などで知られるほか、『ぼく、おつきさまがほしいんだ』や『ロバのジョジョとおひめさま』、『嵐をしずめたネコの歌』など、こども絵本・児童書の翻訳に多数携わっています。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は3歳〜6歳ころ。情緒が育ち始める時期の子どもにぴったりで、自分で読み聞かせてもらっても、親子や保育の場でも楽しめます。夜の月や冒険、友情のテーマが子どもの心に寄り添い、読後は「また読みたい!」と思うこと間違いなしです。
レビュー
この絵本、シンプルだけどすごく心に響きました。もぐらが初めて見るお月さまに心を奪われて「とりたい!」って真剣にチャレンジする姿がもうめちゃくちゃ可愛い。転んだり痛かったりするんだけど、それでも諦めないのって小さい子の純粋さそのものですよね。そして仲間たちが心配しながら支える感じが、本当に温かくてグッときます。絵も柔らかい色使いで、夜空の雰囲気や月の光がとってもきれい。最後に「遠くにあるんだね」と気づいてほっとするもぐらの顔には、思わず胸キュン。大人が読んでも優しい気持ちになれる絵本で、秋の夜長に読み聞かせしたくなる一冊です。