きたかぜとたいよう/バーナデット・ワッツ

『きたかぜとたいよう』、原題は英語で The Wind and the Sun(Aesop’s Fable)で、イソップ童話の代表作の一つです。この絵本は、1993年に日本の西村書店から出版されました。原作は古代ギリシャ、初版発行国はおそらく英語圏。あらすじは「北風と太陽が、どちらが強いかで争い、通りかかった旅人のマントを脱がせたほうが勝ち」と決め、太陽のやさしい熱でマントを脱がせる展開。バーナデットさんらしい柔らかく穏やかな風景画に引き込まれます

略歴

バーナデット・ワッツ(絵)

バーナデット・ワッツ(Bernadette Watts)はイギリスのノーサンプトン生まれ、1942年生まれ。建築家の父と画家の母のもと、戦後の混乱期に成長しつつ、両親がくれる紙片に描きつづけることで創作を育てられました。ケント州のメイドストーン美術学校でブライアン・ワイルドスミスらに師事し、1967年にフランクフルト・ブックフェアでデビュー作となるグリム童話絵本を出版。その後、北欧童話やイソップ童話など数多くの絵本を手がけ、独特の繊細で温かなタッチで親しまれています。現在もケント在住で自然からインスピレーションを受け作品を描き続けています

もき かずこ(訳)

もき かずこさんは1949年、広島県出身。慶應義塾大学文学部卒業後、翻訳家・作家として活躍しています。主な訳書に『めぐりめぐる月』『ドラゴン・キーパー』『にぐるまひいて』『エマおばあちゃん』『ハートビート』などがあり、創作絵本も手がけています。たとえば『くまのまうるとおばけもり』『たんていねこはかせ』などが知られています。訳文は子どもにわかりやすく柔らかい語り口で、絵と物語を自然につなげるスタイルです。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は 3~5歳 が中心で、幼児期の読み聞かせにぴったりです。文章量は多すぎず簡潔で、絵の美しさや情緒的な雰囲気を幼児が楽しめる構成。温かなタッチのイラストとシンプルなストーリーで、親子で安心して読み進められる一冊です。

レビュー

バーナデット・ワッツの柔らかな色彩と風景表現に心がほぐれ、旅人と自然とのやりとりを通じて「力より優しさ」の力を感じました。北風の冷たさ、太陽の暖かさが絵から伝わり、文字よりもむしろ絵に引き込まれるタイプの絵本。もきかずこさんの訳も、リズム良くて耳なじみがよく、小さなお子さんにも伝わりやすいと思います。イソップ童話の教訓がさらりと伝わるので、読み聞かせにもぴったり。何度も手に取りたくなる優しい絵本です。