ハグくまさん/ニコラス・オールドランド

『ハグくまさん』の原題は Big Bear Hug。作・絵:ニコラス・オールドランド、訳:落合恵子さん。初版はカナダ発、2009年に Kids Can Press から刊行され、日本語版は2011年にクレヨンハウスから発売されました。おおらかなくまさんが、森のあらゆるもの、動物も木もハグして回る心あたたまるお話。でもある日、人間が森に入っていちばん立派な木に斧を振り上げた!それを見たくまさんは、いつものハグだけでは済まされず、自分なりの方法で森を守ろうとします。自然を大切にするメッセージがユーモアと絵の温かさで伝わってくる、子どもにも楽しい環境寓話です。

略歴

ニコラス・オールドランド

ニコラス・オールドランド(Nicholas Oldland)は、カナダ出身の絵本作家兼イラストレーター。ニューブランズウィック州のマウント・アリソン大学で美術を学び、商業アーティストや映像作家としても活躍しました。その後、子ども向け生活雑貨ブランド「Hatley/Little Blue House」でクリエイティブディレクターを務めるなど多才な経歴を持ちます。『ハグくまさん』は彼のデビュー作で、森や動物を愛する気持ちをユーモアとともに描いた、画風も物語もあたたかな一冊です。「Life in the Wild」シリーズの第1作目として大きな反響を呼び、世界中で翻訳され愛されています。

落合 恵子(訳)

落合 恵子さんは、日本の著名なエッセイスト・司会者・翻訳家で、子どもの本の翻訳も数多く手がけています。テレビ番組の司会を長年務める一方、児童文学の紹介や朗読活動を通じて、多くの親子に読書の魅力を届けてきました。『悲しみのゴリラ』の訳も、繊細な感情に寄り添いながら、自然で丁寧な日本語へと紡ぎ出しています。やさしく、子どもの目線に立った訳語選びが読む者の心に響きます。

おすすめ対象年齢

この絵本は主に 3歳〜7歳 向けです。短いリズミカルな文と繰り返しの構成、優しい絵柄が特徴で、読み聞かせにもぴったり。自然や森がテーマで、幼児でもわかりやすく、「ハグ」の力や優しさを感覚で味わえる一冊です。親子での読書時間にちょうどいい絵本です。

レビュー

読んでいて、くまさんの温かくておおらかな性格に心がほっこり。森をハグしまくる姿はユーモラスで子どもも思わず笑顔になりそう。そんなくまさんが森の大きな木を斧で切ろうとする人間に出会ったとき、ハグだけじゃない「自分なりの行動」で森を守ろうとする瞬間には、思わず「がんばれ」と応援したくなります。オールドランドさんの絵は木目のような質感があり、「デジタル木版画」みたいな独特な風合いで、テキストと絶妙にマッチ。落合恵子さんの日本語訳も語りかけるように自然で、声に出して読みたくなります。読後には、不思議と自然や他者への思いやりについて子どもと話したくなる。環境への想いも、やさしく伝わる素敵な一冊だと思います。