わたしたち/パロマ・バルディビア

『わたしたち』は、チリ出身の絵本作家パロマ・バルディビアが描く、親と子のかけがえのないつながりをテーマにした作品です。日本語版は2021年岩崎書店より刊行。やさしいタッチの絵とシンプルな言葉が重なり、「わたしたち」という存在の温かさや力強さを静かに伝えてくれます。子どもはやがて成長し、親のもとを離れていきます。でも、心のどこかではずっと「わたしたち」なんだよ、というメッセージが深く心に残ります。時が経っても変わらない愛、離れていても続いていく絆。読み終えたあとに、そっと大切な人を思い出したくなる、そんな一冊です。親子での読み聞かせにはもちろん、大人が読んでも心にしみる物語です。

略歴

パロマ・バルディビア

パロマ・バルディビア(Paloma Valdivia)はチリ出身の著名な絵本作家・イラストレーター。チリのカトリカ大学でデザインを学び、その後スペイン・バルセロナのEINA美術学校でイラストレーションを修めました。著作・イラスト作品は12以上の言語に翻訳され、国際的にも高く評価されています。代表作『Nosotros(わたしたち)』は、2018年に国際的児童書の賞「The White Ravens」選出や米国のFondación Cuatrogatos賞を受賞しました。2023年にはブラチスラバ世界絵本原画展グランプリを受賞し、2024年ボローニャ国際児童図書展では名誉招待作家に選ばれるなど、注目の存在です。

星野 由美(訳)

星野由美(ほしのゆみ)さんは東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、出版社勤務、ペルー大使館勤務を経て、南米での生活経験を活かしスペイン語圏の詩や絵本の翻訳に携わっています。代表的な訳書に『Nosotros(わたしたち)』(岩崎書店)、『まぼろしのおはなし』『なぞなぞえほん ぴぅ!』(ワールドライブラリー)、『たかくとびたて女の子』(汐文社)など多数あります。2025年には『パパはたいちょうさん わたしはガイドさん』(PHP研究所)で産経児童出版文化賞翻訳作品賞を受賞し、多文化やバリアフリーをテーマにした作品にも注目しています

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は、概ね3〜8歳くらいまで幅広く楽しめる内容です。簡潔なテキストと印象的なイラストで構成されているため、小さなお子さんから親子での読み聞かせ、大人の読書にもマッチします。「わたしたち」の関係性を感じ、共有できるすべての人におすすめ。

レビュー

パロマ・バルディビアの描く世界は、言葉少なだけど絵がとても語りかけてくるから、読後にじんわり温かい気持ちに。でもそれだけじゃなく、時間の経過や成長、独立を自然にかつ静かに描いていて、「離れていてもつながっている」という普遍的な親子の絆を優しく伝えてくれる。翻訳の星野由美さんの言葉も余計な装飾がなく、原書の繊細さを丁寧に引き出していて素晴らしい。日本語版でも「わたしたち」というシンプルな語がもつ意味の深さがしっかり響きました。小さな子どもへの読み聞かせにも、大人自身の心に響く一冊にもなりうる、静かな力のある絵本です。