おめでとうおひさま/中川ひろたか

『おめでとうおひさま』(2011年 小学館)は新しい年や季節のはじまりに、おひさまが動物たちに問いかけます。「新しい年、みんなどうしたい?」と聞かれると、動物たちは「なるべくけんかしない」「なるべく笑う」「なるべく嫌いって言わない」など心温まる願いを語り始めます。おひさまは「なるべくっていうのがいいね」と笑顔で応じ、無理をせずにできる範囲で優しく生きることの大切さを伝えます。中川ひろたかさんの平和で前向きな言葉に、片山健さんが優しい絵を添えた一冊。年齢を問わず、読む人すべてに「ラブ&ピース」を感じさせてくれる絵本です。

略歴

中川 ひろたか

中川ひろたかさんは1954年埼玉県生まれ。シンガーソングライター、絵本作家、保育士などさまざまな顔を持つクリエイター。1995年に『さつまのおいも』でデビュー。また『ないた』で日本絵本賞受賞。モー・ウィレムズ作品をはじめ、翻訳絵本も多く手がけ、独自のユーモアある語り口が魅力。さらに作曲された『世界中のこどもたちが』などの歌が、保育現場でも広く親しまれています。

片山 健(絵)

片山健(かたやまけん)さんは、1940年に東京都生まれ、武蔵野美術大学商業デザイン学科を卒業後、1968年に絵本作家としてデビューしました。代表作には『タンゲくん』(講談社出版文化賞受賞)、『でんでんだいこのいのち』(小学館児童出版文化賞受賞)、『コッコさん』シリーズなどがあり、福音館書店を中心に多くの名作を手がけています。また、絵本だけでなく油彩画家としても活動しており、吉祥寺美術館などで展示されるなど、多彩な創作活動を続けています。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は3歳〜5歳ごろの幼児から小学校低学年とされています。少ない文字数と大きな判型で、言葉のリズムや「なるべく」というやわらかな表現が心地よく、子どもだけでなく大人にも響く内容です。新年や節目のタイミングに読み聞かせにもぴったりです。

レビュー

「なるべく笑おう」「なるべくけんかしない」──この柔らかな言葉が心にじんわり響きます。完璧じゃなくてもいいから、少しずつ優しい気持ちを増やしていけばいいよ、というメッセージに、読むたび元気をもらえそう。片山健さんのイラストは温かみがあって、見るだけでほっとやわらぐ雰囲気です。動物たちが語る「なるべく○○」の表情も可愛くて、ページをめくる手が止まりません。大人は読み終えた後に自分の日常を振り返りたくなるし、子どもは小さな「心の決意」を自然と感じ取れると思います。家族みんなで共有したい、心ほっとする一冊です。