どろきょうりゅう/中川 ひろたか・鈴木 翼

『どろきょうりゅう』は、中川ひろたかさんと鈴木翼さんの共著、市居みかさんが絵を手がける絵本(2015年 世界文化社刊)です。泥団子から生まれた恐竜と男の子・てるくんとの心温まる物語。てるくんが作った泥団子が、ある日ふしぎな生命を宿して恐竜に成長!子どもたちに大人気となりますが、プールで溶けてしまい…涙の別れ。再会のチャンスはあるのでしょうか? 市居みかさんによる、温かく美しい色彩豊かな絵が、物語の優しさをさらに引き立てています。

略歴

中川 ひろたか

中川ひろたかさんは1954年埼玉県生まれ。シンガーソングライター、絵本作家、保育士などさまざまな顔を持つクリエイター。1995年に『さつまのおいも』でデビュー。また『ないた』で日本絵本賞受賞。モー・ウィレムズ作品をはじめ、翻訳絵本も多く手がけ、独自のユーモアある語り口が魅力。さらに作曲された『世界中のこどもたちが』などの歌が、保育現場でも広く親しまれています。

鈴木 翼

鈴木翼(すずき つばさ)さんは、私立保育園や子育て支援センターで約8年間勤務した後、2009年に「あそび歌作家」として活動を開始しました。保育雑誌への連載や執筆、全国でのファミリーコンサートや保育者向け講習会にも出演。2013年には『なんでやねん』(世界文化社)で絵本作家デビューし、以後多数の絵本を発表。NHKの教育番組や楽曲提供も手がけ、2015年からはフジロック・キッズランドステージにも4年連続出演。2019年には大阪芸術大学短期大学部保育学科の客員教授も務めています。保育者目線の温かい作品づくりが魅力の作家です。

市居 みか(絵)

市居みか(いちいみか,1968年・兵庫県生まれ)さんは神戸大学教育学部美術科を卒業後、電器メーカーで企画・デザインに携わった後、絵本作家に転身。2001年に『ヘリオさんとふしぎななべ』(アリス館)で絵本作家デビュー。その後『イモムシかいぎ』『ろうそくいっぽん』『ねこのピカリとまどのほし』『いっぽんみちをあるいていたら』など多数の作品を発表し、2006年から始まる「こぶたのブルトン」シリーズでも人気を博しています。現在はイラスト・絵本制作のほか、ギャラリーでの個展やワークショップ講師、絵話塾での授業など幅広く活動中。温かみある画風と、登場キャラクターたちのユーモアあふれる表現が特徴です。

おすすめ対象年齢

対象年齢は主に3〜6歳くらいがぴったり。泥遊びや恐竜が大好きな幼児に心に響くお話です。絵本の語り口もわかりやすく、色彩豊かなイラストとファンタジックな設定で、年少〜年中児が飽きずに夢中になって読み進められます。‬読み聞かせにも向いていて、親子や保育現場で楽しめる一冊です

レビュー

『どろきょうりゅう』は、子どもの想像力とあそびの楽しさがぎゅっと詰まった一冊。てるくんが作った泥団子から生まれた恐竜との時間は短くても、とても濃くてキラキラしていて、読んでいて胸が熱くなります。プールで溶けてしまったあと、みんなとどろ玉子を作るもなかなかうまくいかず、でも最後に足跡を見つける…という希望を残した終わり方がとても印象的。「本当に恐竜がいたのかも?」と信じたくなるような余韻があり、読者の心にそっと物語を託してくれます。夢と現実のあわいにある、あたたかくてちょっと切ない、でもワクワクする一冊です。