ウォッシュバーンさんがいえからでない13のりゆう/中川 ひろたか

『ウォッシュバーンさんがいえからでない13のりゆう』(作:中川ひろたか/絵:高畠那生、2020年 文溪堂)は、家から一歩も出ない青年・ウォッシュバーンさんが、外に出ない“13の理由”を語るユーモラスな絵本。ドアにはさまれる、カラスにつつかれる、果ては「ももたろうが来るかも」と妄想はどんどん加速。思わず「あるある」と笑ってしまうけれど、読み終えるころには「自分にもこんなとこあるな」と不思議な共感も。中川さんのテンポの良い文章と、高畠さんの独特な絵が絶妙にマッチ。声に出して読んでも楽しくて、読み聞かせにもぴったりです。

略歴

中川 ひろたか

中川ひろたかさんは1954年埼玉県生まれ。シンガーソングライター、絵本作家、保育士などさまざまな顔を持つクリエイター。1995年に『さつまのおいも』でデビュー。また『ないた』で日本絵本賞受賞。モー・ウィレムズ作品をはじめ、翻訳絵本も多く手がけ、独自のユーモアある語り口が魅力。さらに作曲された『世界中のこどもたちが』などの歌が、保育現場でも広く親しまれています。

高畠 那生(絵)

高畠 那生(たかばたけ なお)さんは、1978年に岐阜県で生まれ、東京造形大学美術学科を卒業されました。2003年に『ぼく・わたし』(絵本館)でデビューし、その後、多くの絵本を手掛けています。代表作には、『カエルのおでかけ』(フレーベル館)、『バナナじけん』(BL出版)、『うしとざん』(小学館)などがあり、これらの作品で日本絵本賞や産経児童出版文化賞ニッポン放送賞などを受賞されています。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢はおおよそ4歳〜小学校低学年くらい。ナンセンスな理由の連続に、小さな子どもたちは大笑い。だけど、大人が読めば「ちょっと気持ちわかる…」と共感する不思議な味わいも。家族で一緒に楽しめる一冊です。

レビュー

ウォッシュバーンさんの言い分、一見ただの心配性だけど、読んでるうちに「わたしもこんなふうに理由つけて動けないときあるなぁ」って妙に納得。非現実なようでリアルな心理が絶妙です。そして理由が進むにつれて現実からどんどん離れていくテンポが面白くて、笑いながらどこか励まされる感じ。高畠さんのシュールなイラストもピッタリで、軽やかに不安を吹き飛ばしてくれます。読み終わったあと、「ま、いいか。ちょっと外に出てみよう」って思わせてくれる、不思議に元気が出る絵本です。