『た・ま・ご』(作:ケビン・ヘンクス/訳:中川ひろたか、2021年 光村教育図書)は、2017年にアメリカで出版された絵本 Egg の日本語版。ページをめくるたびに静かに展開する物語と、やさしい色使いが印象的です。4つ並んだたまごのうち、3つはかわいい小鳥に。最後のひとつから現れたのは、なんとワニ!びっくりして逃げる小鳥たち、しょんぼりするワニ…。だけどそのあと、小さな奇跡のような心の交流が生まれます。言葉は少なめだけど、絵だけでしっかり伝わる優しい世界。小さな子も大人も、きっとじんわり癒される一冊です。
略歴
ケビン・ヘンクス
ケビン・ヘンクス(Kevin Henkes)は1960年、アメリカ・ウィスコンシン州生まれ。作家・イラストレーターとして数多くの絵本や児童文学を手がけています。『リリーのぼうし』や『ふつうに学校へいくふつうの日』など、子どもたちの気持ちに寄り添う繊細な作風が特徴。2005年に『Kitten’s First Full Moon』でコールデコット賞を受賞。静かで優しいストーリーテリングと温かみあるイラストで、世界中にファンの多い作家です。
中川 ひろたか(訳)
中川ひろたかさんは1954年埼玉県生まれ。シンガーソングライター、絵本作家、保育士などさまざまな顔を持つクリエイター。1995年に『さつまのおいも』でデビュー。また『ないた』で日本絵本賞受賞。モー・ウィレムズ作品をはじめ、翻訳絵本も多く手がけ、独自のユーモアある語り口が魅力。さらに作曲された『世界中のこどもたちが』などの歌が、保育現場でも広く親しまれています。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢はおよそ3歳から。文章はとても少なく、絵の流れで物語が進むので、はじめての絵本にもぴったりです。繰り返しや間の取り方が絶妙で、読み聞かせにも◎。小さなお子さんから、心の動きに敏感な年齢の子どもたちまで、幅広く楽しめる一冊です。
レビュー
読みはじめは静かでかわいい小鳥のお話、と思っていたら…まさかのワニ登場にビックリ!でもそのあと、小鳥たちがそっと寄り添う場面がとっても優しくて、ちょっぴり泣きそうになりました。ケビン・ヘンクスさんの絵はやわらかくて、色も少ないのに気持ちが伝わってくるのがすごい。中川ひろたかさんの訳も自然で読みやすく、小さなお子さんにもすっと届く感じです。ちがいを受け入れるやさしさ、そっと寄り添うことの大切さが、心にじんわり残る絵本です。