やきいもの日/村上 康成

村上康成さんの『やきいもの日』(2006年、徳間書店)は、秋の自然と子どもたちの気持ちを丁寧に描いた一冊。主人公・りっちゃんは友だちとケンカしてしまい落ち込むけど、帰宅するとその子が家に来ていて、やきいもを一緒にすることに。ほくほくのやきいもが、ふたりの距離をふわっと近づけてくれる。友情って、言葉より温もりでつながるものなのかも。読み終えた後は秋の風と甘いにおいが感じられるような、心あたたまるお話です。

略歴

村上 康成

村上康成(むらかみやすなり)さんは1955年岐阜県生まれ。魚や森など自然をテーマにした作品が多く、「自然派アーティスト」としても知られます。代表作に『ピンクとスノーじいさん』や『なつのいけ』などがあり、1995年には『ようこそ森へ』でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞。中川ひろたかさんとのコンビでも多くの絵本を手がけ、子どもたちの成長や日常をやさしく描き出しています。個展や講演活動も精力的に行い、絵本の魅力を広げ続けています。

おすすめ対象年齢

この絵本は、4歳ごろから小学校低学年くらいの子どもにぴったり。登場人物の気持ちに共感しながら、友だちとの関わりや、ケンカした後の仲直りの大切さを感じられます。やきいもを通して「素直になること」や「あたたかい気持ち」が伝わるので、読み聞かせにもおすすめ。

レビュー

ケンカしてしまったあとの気まずさや、でも本当は仲直りしたい気持ち――この絵本は、そんな子どもの繊細な心をやさしく描いています。りっちゃんと友だちの再会の場面では、自分もほっとした気持ちに。やきいものにおいが漂ってくるような描写とあたたかな色使いが印象的で、読んでいるうちに心がぽかぽかしてきました。秋に読むとさらに味わい深く、大人にも響く一冊です。