まいごのどんぐり/中川 ひろたか

松成真理子さん作・絵『まいごのどんぐり』(童心社、2002年刊)は、男の子・コウくんと、“ケーキ”と名づけられたどんぐりの、心あたたまる交流を描いた物語。ケーキはコウくんのカバンの中で一緒にかけっこや雨の日のお散歩、プール遊びを楽しむ大切な相棒。でもある秋の日、うっかり落ちてしまって…。その後、どんぐりは木となり、成長した大人のコウくんを静かに見守る存在へ――。誰かへの想いをずっと持ち続けるって、じんわり胸にしみます。絵本は“誰かを大好きでい続けること”“ずっと想いつづける大切な気持ち”に気づかせてくれるあたたかな一冊。

略歴

松成 真理子

松成真理子さんは1959年生まれで、大阪府出身のイラストレーター・絵本作家。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)を卒業して、広告や雑誌のイラストの世界から絵本の世界へステップアップ。デビュー作『まいごのどんぐり』(童心社)で第32回児童文芸新人賞を受賞したのがきっかけ。主な作品には『じいじのさくら山』『ふでばこのなかのキルル』(白泉社)、『たなばたまつり』『はるねこ』(講談社)、『せいちゃん』(ひさかたチャイルド)、『ころんちゃん』(アリス館)などたくさんあって、ほんわかあったかい絵柄と物語が魅力です。

おすすめ対象年齢

この絵本『まいごのどんぐり』は、童心社が推奨する対象は 3歳~。小さな子どもにも親しみやすいつくりになってます。季節の移り変わりや成長をやさしい絵とともに描いていて、読み聞かせにもぴったり。親子で読みながら、大切な気持ちに触れる時間になりそうです。

レビュー

この絵本、じんわりきます。コウくんが“ケーキ”っていう名前をつけたどんぐりを大事にして、お散歩したり走ったりする関係のかわいさがたまらない!でもある秋にケーキがいなくなってしまって、コウくんが必死に探す姿に心をぎゅっとつかまれます。そして季節が過ぎて、ケーキが木になってコウくんを見守り続ける展開には、ぐっとくるものがありますね。一緒に遊んだ思い出が形を変えてもつながっている感じ、ほんとに泣きそうになる…!自分が大切にしてもらった存在を忘れても、いつかまた気づいてもらえるかもしれないって希望に満ちた感じ、めっちゃ好き。これは子どもはもちろん、大人にも深く刺さる宝物のような絵本です!