竹下文子さん作、鈴木まもるさん絵の『おすしのせかいりょこう』(2008年 金の星社)は、回転寿司のお寿司たちが店を飛び出し、世界をめぐる大冒険を描いた絵本です。野を越え、山を越え、海を渡り、地球を一周するお寿司たちの姿は、ユーモラスでワクワク感いっぱい。テンポのよい文章と、明るくのびやかな絵が相まって、読む人の想像力をぐんぐん広げてくれます。食べ物の枠を越えて自由に旅をするお寿司たちは、子どもにとって「夢のような存在」。楽しいリズムに乗せて世界を旅する感覚を味わえる、読み聞かせにもぴったりの一冊です。
略歴
竹下 文子
竹下文子(たけしたふみこ)さんは1957年福岡県生まれ、東京学芸大学卒業。大学在学中から童話の執筆を始め、1978年に「月売りの話」で日本童話会賞を受賞。以降、『星とトランペット』『黒ねこサンゴロウ』シリーズなどで路傍の石幼少年文学賞を受賞し、長年にわたって児童文学・絵本の世界で活躍されています。代表作には『せんろはつづく』『ひらけ!なんきんまめ』『なまえのないねこ』など、受賞歴も多数(絵本にっぽん賞、産経児童出版文化賞、講談社絵本賞など)。静岡県在住で、多くの子どもたちに親しまれている作家です。
鈴木 まもる(絵)
鈴木まもるさんは1952年東京生まれ。東京芸術大学工芸科を中退後、1980年に『ぼくの大きな木』で絵本作家としてデビュー。作品数は200冊以上にのぼります。1995年に「黒ねこサンゴロウ」シリーズで赤い鳥さし絵賞を、2006年に『ぼくの鳥の巣絵日記』で講談社出版文化賞絵本賞、2015年には『ニワシドリのひみつ』で産経児童出版文化賞JR賞など数々の受賞歴あり。伊豆半島に在住し、画家・絵本作家として活動する傍ら、鳥の巣研究家として収集・展覧会・講演なども行っています。
おすすめ対象年齢
『おすしのせかいりょこう』の対象年齢は、主に3歳頃から小学校低学年くらいです。リズム感のある言葉とユーモアたっぷりの展開は小さな子どもにも親しみやすく、鮮やかでスケールの大きな絵は年齢を問わず楽しめます。食べ物や旅といったテーマは幅広い世代に興味を持たれやすく、親子で笑いながら世界を感じられる絵本です。
レビュー
お寿司たちが旅に出るというユニークな発想にまず心をつかまれました。いつも食卓にある身近な存在が、野を越え海を渡り、世界中をめぐる姿はとても新鮮でワクワクします。テンポのよい文章は声に出して読むとさらに楽しく、鈴木まもるさんの明るく力強い絵が物語に広がりを与えています。特に、寿司が国境を越えていくシーンは、子どもの想像力を刺激し「世界は広い!」という感覚を自然に届けてくれます。読み聞かせにもぴったりで、親子で笑いながら世界旅行の気分を味わえる、楽しい一冊だと思いました。


