アーノルド・ローベル作・絵『いたずら王子バートラム』(原題 Prince Bertram the Bad、アメリカで1963年初版、日本語版は2003年偕成社刊)は、とんでもなくわんぱくな王子のお話。バートラム王子はいたずらばかりで手に負えず、ついに怒った魔女に竜へと姿を変えられてしまいます。そこから始まるちょっと奇妙でユーモラスな展開は、ローベルならではのシンプルな語り口とユーモアあふれる絵が魅力。子どもにとってはドキドキ、大人にとってはくすっと笑えて教訓も感じられる、読みごたえのある絵本です。
略歴
アーノルド・ローベル
アーノルド・スターク・ローベル(Arnold Lobel、1933年 – 1987年)は、ロサンゼルス生まれの画家兼作家。プラット美術学校卒業後、児童書を中心に執筆・イラストを手がけました。代表作は「がまくんとかえるくん」シリーズ(1970‑79年)、Caldecott Honor『ふたりはともだち』、Newbery Honor『ふたりはいつも』、Caldecott Medal『ローベルおじさんのどうぶつものがたり』など、多くの賞を受賞。子どもの心に寄り添う優しいタッチとユーモアを織り交ぜた作風は、現代でも愛され続け、1970~80年代にかけ日本でも翻訳・出版が進みました。
湯本 和美(訳)
湯本 和美(ゆもと かずみ)さんは、英米児童文学や絵本の翻訳を手がける翻訳家です。児童書を中心に幅広く活動し、ユーモアやあたたかみを大切にした訳文で定評があります。代表的な訳書にアーノルド・ローベルの『いたずら王子バートラム』(偕成社、2003年)、メアリー・ノートンの「床下の小人たち」シリーズ、ほか海外の古典や現代児童文学の翻訳などがあります。原作の魅力を生かしながら、日本の子どもたちに伝わりやすい言葉に置き換える巧みな表現力で、多くの作品を届けています。翻訳を通じて、海外の児童文学を身近に感じられるようにしてくれる存在です。
おすすめ対象年齢
『いたずら王子バートラム』は、4歳くらいから小学校低学年におすすめの絵本です。シンプルなストーリーとユーモラスな挿絵で、小さな子どもでも楽しめますし、王子が竜にされてしまうという少しスリルのある展開は、小学生にもぴったり。読み聞かせはもちろん、一人読みのきっかけにもなります。
レビュー
この絵本は「わんぱくすぎるとどうなるか」をユーモラスに描いた作品ですが、ただのお説教話に終わらないところがローベルらしいなと思いました。王子が竜になってしまう展開は子どもにとってドキドキですが、絵のタッチがあたたかいので怖くなりすぎず、最後には安心感があります。いたずら心と成長、そしてちょっとした教訓が込められていて、読み終えると親子で「やっぱり人を困らせすぎちゃだめだね」と話したくなる絵本です。