しりたがりやのこぶたくん/ジーン・バン・ルーワン

ジーン・バン・ルーワン作、アーノルド・ローベル絵、三木卓訳の『しりたがりやのこぶたくん』(原題 More Tales of Oliver Pig、アメリカで1979年初版、日本語版は1995年童話館出版)は、こぶたくん一家の心あたたまる日常を描いた短編集です。妹アマンダやお父さんお母さんとのほほえましいやりとりがユーモラスに描かれ、全5編のお話にほっと癒されます。小さなできごとから家族の愛情を感じられる一冊です。

略歴

ジーン・バン・ルーワン

ジーン・バン・ルーワン(Jean Van Leeuwen,1937年 – 2025年)は、アメリカで活躍する児童文学作家で、特に「Oliver Pig(こぶたくん)」シリーズで知られています。1979年に『Tales of Oliver Pig』でシリーズが始まり、その後も『More Tales of Oliver Pig』など続編が多数刊行されました。シリーズを通じて、こぶたくんと妹アマンダの日常がユーモアと温かさたっぷりに描かれており、小さな読者に絶大な支持を得ています。長年にわたり子どもたちの心をつかむ作者として、絵本界で確かな存在感を持ち続けている方です。

アーノルド・ローベル(絵)

アーノルド・スターク・ローベル(Arnold Lobel、1933年 – 1987年)は、ロサンゼルス生まれの画家兼作家。プラット美術学校卒業後、児童書を中心に執筆・イラストを手がけました。代表作は「がまくんとかえるくん」シリーズ(1970‑79年)、Caldecott Honor『ふたりはともだち』、Newbery Honor『ふたりはいつも』、Caldecott Medal『ローベルおじさんのどうぶつものがたり』など、多くの賞を受賞。子どもの心に寄り添う優しいタッチとユーモアを織り交ぜた作風は、現代でも愛され続け、1970~80年代にかけ日本でも翻訳・出版が進みました。

三木卓(訳)

三木 卓(みき たく、1935年 – 2023年)は、詩人・作家・翻訳家として活躍した知の巨人。早稲田大学第一文学部露文科卒業後、詩集『わがキディ・ランド』で高見順賞、芥川賞受賞作『鶸』、童話『ぽたぽた』で野間児童文芸賞など、多くの文学賞を受賞。児童文学分野でも優れた実績があり、特に『ふたりはともだち』などローベル作品の翻訳で知られ、三木さんによる自然で心温まる訳文が1960~70年代から子どもたちに親しまれています 。

おすすめ対象年齢

『しりたがりやのこぶたくん』は、4歳頃から小学校低学年の子どもにぴったりの絵本です。短編仕立てなので、読み聞かせにも一人読みの練習にもおすすめ。ユーモアとあたたかさが詰まっていて、幼児には笑いや安心感を、大人には共感や癒しを与えてくれます。年齢を超えて楽しめる、親子で共有できる物語です。

レビュー

この絵本は、特別な事件が起こるわけではなく、日常の小さなひとコマが丁寧に描かれているのが魅力です。妹アマンダの好奇心いっぱいの姿や、お母さんが「ひとりでいたいの」と木の上で休む場面には、子どもだけでなく親の立場からも共感できました。読み進めるうちに、家族のあたたかさや何気ない時間の大切さに気づかされ、心がじんわりほぐれていきます。大人が読んでもクスッと笑えて癒される、まさに家族で一緒に楽しみたい一冊です。