子リスのアール/ドン・フリーマン

『子リスのアール』(原題 Earl the Squirrel)は、作・絵:ドン・フリーマン(Don Freeman)、訳:山下明生さんによる絵本です。初版は2005年にアメリカで出版されました。日本語版は2006年にBL出版から刊行されました。物語は、灰色リスのお母さんに「自分でドングリを探すときだ」と言われたアールが、赤いスカーフを巻いて森を探検するところから始まります。フクロウに教えられた木には雄ウシがいて…という小さな冒険物語。モノクロの絵に赤いスカーフが映え、Freemanらしい温かさと「自立」「勇気」のテーマが心に残る一冊です。 

略歴

ドン・フリーマン

ドン・フリーマン(Don Freeman, 1908-1978)は、アメリカ出身の画家・絵本作家・イラストレーター。ニューヨークで画家として活動したのち、1950年代以降、児童書や絵本の執筆・挿絵を多数手がけました。代表作といえばまず『Corduroy』(日本語版『くまのコールテンくん』)が長年にわたって親しまれており、全米教育協会「教師が選ぶ子ども向け本TOP100」にも選ばれています。続編として1978年に『コーちゃんのポケット』(A Pocket for Corduroy)も書かれ、絵本だけでなく、背景にニューヨークの街や人々への観察眼からくる静かな感情描写がある点が高く評価されています。

やましたはるお(訳)

山下明生(やました はるお)氏は、1937年、東京に生まれ瀬戸内海の広島県能美島で育ちました。広島県立大柿高等学校を経て、京都大学文学部仏文学科を卒業後、上京してあかね書房に入社し、児童書の編集に携わりました。その後、同人誌「こだま」に参加したことを機に創作活動に専念します。1973年に『うみのしろうま』で野間児童文芸推奨作品賞、1975年に『はんぶんちょうだい』で小学館文学賞を受賞するなど、多くの作品で高い評価を得ています。また、「バーバパパ」シリーズの翻訳者としても知られています。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は、おおよそ3〜7歳くらいが中心だと思われます。Freemanの絵本は、文字数もほどよく、絵が豊かでわかりやすいため、幼稚園児から小学校低学年の子どもたちが読み聞かせにも、自分で読む入門書としても楽しめる構成です。黒と白の細密な絵に、赤いスカーフという明瞭なアクセントがあることで、子どもたちの視線を引きつけ、物語への没入を助けています。

レビュー

『子リスのアール』を読んで、まず印象に残るのは、真っ赤なスカーフがモノクロームの画面にポツンと輝いているビジュアルの効果です。ちいさなリスが、母親から「そろそろ自分でドングリを探しなさい」と言われ、自分なりの方法で一晩中探検に出かけるという筋立ても、シンプルだけれどしっかり子どもの心情や勇気、自立への一歩を描いていて、読後にじんわり温かい気持ちになります。Freemanのスクラッチボード調の絵は、夜の森の雰囲気をしっとりと、かつやわらかく描き出していて、知恵や助け合い、そしてちょっとしたハラハラ感やユーモアもあって、子どもにも大人にも安心しておすすめできる絵本です。日本語訳(山下明生さん)も、ほどよい言葉づかいで、読み聞かせにも違和感がなく、原作の空気をうまく再現していると思います。この一冊を通して、「小さな一歩を踏み出す勇気」と「自分のやり方で世界を見ること」の大切さを、子どもと一緒に感じられるのがすてきだな、と思いました。