佐野洋子さんの『ねえとうさん』(2001年 小学館)は、『100万回生きたねこ』の作者としても知られる佐野さんが描いた心温まる絵本です。久しぶりに帰ってきたお父さんと一緒にお出かけするくまの子が、お父さんの力強さや優しさを感じながら一日を過ごします。父と子のやりとりがユーモラスに、そしてじんわり胸にしみる形で描かれています。本作は第7回日本絵本賞と第51回小学館児童出版文化賞を受賞し、多くの読者から高い評価を得ています。佐野洋子さんらしい、シンプルでいて奥深い筆致が光る一冊です。
略歴
佐野 洋子
佐野 洋子さん(さの ようこ、1938年 – 2010年)は、日本の絵本作家、エッセイスト、翻訳家として知られています。中国・北京で生まれ、幼少期を北京や大連で過ごしました。戦後、家族とともに日本に引き揚げ、山梨県や静岡県で育ちました。武蔵野美術大学デザイン科を卒業後、白木屋デパートの宣伝部でデザイナーとして勤務しました。その後、ドイツのベルリン造形大学でリトグラフを学び、帰国後に絵本作家としての活動を開始しました。代表作『100万回生きたねこ』(1977年)は、哲学的な内容で大人からも高い評価を受けています。また、エッセイや『ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス』の翻訳など海外絵本の翻訳も手がけ、多彩な才能を発揮しました。2003年には紫綬褒章を受章し、2004年にはエッセイ集『神も仏もありませぬ』で小林秀雄賞を受賞しています。
おすすめ対象年齢
『ねえとうさん』は、父と子のやりとりをテーマにした絵本で、幼児から小学校低学年くらいまでが対象とされています。小さな子どもはお父さんとの日常の関わりを親しみやすく楽しめ、大人が読むと親子関係の大切さを改めて感じられる作品です。
レビュー
読んでいてまず感じたのは、佐野洋子さんならではの、飾らない言葉とユーモアの中にある深い愛情です。くまの子が「ねえとうさん」と呼びかける声が、どこか甘えん坊でありながらも、お父さんを誇らしく思っている気持ちが伝わってきます。普段はなかなか口にできない親子の思いを、絵本という形で素直に表現しているところが素敵でした。特に大人になってから読むと、子どもの頃の父への思い出がよみがえるようで、胸がじんと熱くなります。親子で一緒に読むのもおすすめです。


