マドレーヌといたずらっこ/ルドウィッヒ・ベーメルマンス

ルドウィッヒ・ベーメルマンスさんが作・絵、瀬田貞二さんが訳を手がけた絵本『マドレーヌといたずらっこ』です。パリの寄宿舎のお隣に引っ越してきたスペイン大使の息子ペピートは、動物たちをいじめるたいへんな「いたずらっこ(Bad Hat)」です。そのいたずらがエスカレートし、ペピートが野良犬に取り囲まれる危機に陥りますが、勇敢なミス・クラベルとマドレーヌが彼を救います。初版原題は『Madeline and the Bad Hat』初版発行国はアメリカ、初版発行年は1956年で、日本語版は1973年に福音館書店から出版されました。いたずらを通して、優しさと勇気を描いた、マドレーヌシリーズの名作の一つです。

略歴

ルドウィッヒ・ベーメルマンス

ルドウィッヒ・ベーメルマンス(Ludwig Bemelmans,1898–1962)はオーストリア・チロルに生まれ、若くしてアメリカへ渡り作家・画家として活躍しました。移民としてさまざまな職を経験したのち、持ち前のユーモアと観察力を生かして執筆活動を始めます。彼の代表作は、1939年に誕生した「マドレーヌ」シリーズ。小さな寄宿舎の少女たちの姿を軽快な文体と鮮やかなイラストで描き、国際的に人気を集めました。『マドレーヌといぬ』はコルデコット賞を受賞するなど、高く評価されています。没後は孫のジョン・ベーメルマンス・マルシアーノがシリーズを継承し、その世界はさらに広がりました。また、ニューヨークのホテルに残る壁画など、大人向けの芸術作品もあり、多彩な才能を持つ作家として知られています。

せた ていじ(訳)

せたていじ(瀬田 貞二、1916年 – 1979年)は、東京市本郷区(現:東京都文京区)湯島に生まれました。東京帝国大学文学部国文科を卒業後、平凡社に入社し、『児童百科事典』全24巻の企画編集に携わり、1956年完成。その後、児童文学の翻訳や評論、創作に専念し、J・R・R・トールキンの『指輪物語』やC・S・ルイスの『ナルニア国ものがたり』など、多くの名作を日本に紹介しました。その他、日本の民話の再話もあり、『かさじぞう』『ふるやのもり』などはロングセラーで多くの人々に愛され続けています。また、自宅に「瀬田文庫」を開き、地域の子どもたちに読書の場を提供するなど、亡くなる直前まで児童文学の普及に尽力しました。

おすすめ対象年齢

この絵本の対象年齢は、だいたい3歳から小学校低学年くらいのお子さんにおすすめです。いたずら好きなペピートと、正義感あふれるマドレーヌの対比が明確なので、善悪の判断を学び始める時期にぴったりです。また、いたずらの結果どうなるのか、友達を助けることの勇気とは何かを、物語を通して感じ取ることができるでしょう。

レビュー

『マドレーヌといたずらっこ』は、マドレーヌのシリーズの中でも特にドラマチックで、読んでいてハラハラしますよね!ペピートのいたずらが、ただの悪ふざけでは済まないレベルまでエスカレートしてしまうところは、親としてはドキッとさせられます。でも、そんな彼を、自分の危険を顧みずに助けに行くマドレーヌの勇気と優しさには、胸を打たれます。(あ、猫を助けたんだった・・・)そして、事件を通してペピートが改心していく姿が丁寧に描かれていて、子どもたちの成長を見守る喜びを感じさせてくれる物語です。