どうぞのいす/香山 美子

香山美子の『どうぞのいす』は、1981年に発行された心温まる絵本です。この物語は、森の中に置かれた「どうぞのいす」を巡る動物たちの優しい心の循環を描いています。一匹のウサギが作った椅子に「どうぞ」の札をつけたことから、動物たちが次々とお互いを思いやる行動をとるようになります。誰かのために行動することの大切さや、思いやりが生む喜びを自然に伝える物語は、小さな子どもたちにも分かりやすく、家族で楽しめる一冊です。物語を通じて、子どもたちに優しさや他者を思いやる心の大切さを教えてくれる名作です。

略歴

香山美子

香山美子(こうやま よしこ)は、日本の児童文学作家、詩人。1928年、東京都に生まれる。大学を卒業後、子どもの成長や想像力に触発され、創作活動を始める。絵本や童話を数多く発表し、親しみやすい言葉と温かみのある世界観が特徴。代表作『どうぞのいす』(1981年)は、子どもたちに優しさや思いやりを伝える名作として、世代を超えて読み継がれている。この作品は日本国内外で評価され、絵本作家の柿本幸造との共作で多くの読者に親しまれている。『ごろりん ごろん ころろろろ』(1984年)、『ヒッコリーのきのみ』(1985年)など幼少期の心に寄り添う作品を生み出し続け、多くの児童文学賞を受賞している。彼女の作品は、家庭や学校での読み聞かせにも適しており、現在でも幅広い人気を誇る。

柿本幸造

柿本幸造(かきもと こうぞう、1915年 – 1998年)は、日本の絵本画家です。広島県高田郡吉田町(現・安芸高田市吉田町)に生まれ、上京後は広告関係の会社に勤務しました。1954年から月刊絵本の挿絵を手がけるようになり、以後、絵本や童話の世界で活躍しました。代表作には、香山美子作の『どうぞのいす』や、蔵冨千鶴子作の「どんくまさん」シリーズがあります。その温かみのある色彩と優しいタッチのイラストは、多くの読者に親しまれています。1959年には小学館児童文化賞を受賞し、1980年にはフィンランド児童文学協会翻訳児童図書最優秀賞を受賞するなど、その功績は高く評価されています。

おすすめ対象年齢

香山美子の『どうぞのいす』は、主に3歳から6歳の幼児を対象とした絵本です。やさしく親しみやすいストーリーと平易な文章が、小さな子どもたちにも理解しやすく、また動物たちの思いやりの行動が描かれることで、社会性や優しさを育むきっかけとなります。さらに、繰り返しの要素がある物語の展開や柿本幸造の温かみのあるイラストが、読み聞かせにぴったりです。年齢が上がっても、思いやりのテーマは深い学びとなり、小学校低学年にも十分楽しめる内容です。

レビュー

香山美子の『どうぞのいす』は、読むたびに心が温かくなる一冊です。この絵本の魅力は、シンプルながら深いテーマにあります。「どうぞ」という言葉に込められた優しさと信頼が、動物たちの行動を通じて自然に伝わってきます。一匹のウサギが置いた椅子が、誰かの思いやりを連鎖的に引き出していく様子は、まるで小さな奇跡のようで感動的です。柿本幸造の優しいタッチのイラストも、物語の温かさを一層引き立てています。特に、小さな子どもが「誰かのために何かをする」ことの大切さに気づける点が素晴らしいと感じます。また、大人が読むと、その純粋さや無償の行動に学ぶことも多いでしょう。この絵本は、子どもと大人が一緒に楽しみながら、思いやりや信頼の価値を共有できる名作だと思います。

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