色の女王/ユッタ・バウアー

ユッタ・バウアー作の絵本『色の女王』(原題:Die Königin der Farben)は、1998年にドイツで初めて発行された作品です。この絵本は、感情と色彩の豊かな関係を描き出した、美しいビジュアルと深いメッセージが特徴の作品です。主人公の「色の女王」は、それぞれの色が持つ特性や力に触れながら、喜びや悲しみ、怒りなどの感情を表現します。ユーモアと哲学が絶妙に組み合わされた物語は、子どもにも大人にも共感を呼び起こし、感情表現の大切さを教えてくれます。バウアーの独特のイラストはシンプルながら印象的で、色彩が感情の象徴として鮮やかに語られる点が魅力的です。

略歴

ユッタ・バウアー

ユッタ・バウアー(Jutta Bauer)さんは、1955年、当時の西ドイツ・ハンブルクに生まれた児童文学作家であり、イラストレーターです。専門学校で学んだ後、雑誌や児童書のイラストレーターとして活動を開始し、ドイツで最も知られるイラストレーターの一人となりました。彼女の作品は、シンプルでユーモラスなイラストと深いテーマを組み合わせ、子どもだけでなく大人の心も捉えます。
2001年には、自身が文と絵を手がけた『おこりんぼママ』(原題:Schreimutter)でドイツ児童図書賞絵本部門を受賞し、2010年には国際アンデルセン賞画家賞を受賞しています。主な作品として、『色の女王』(原題:Die Königin der Farben)、『いつもだれかが…』(原題:Opas Engel)、『羊のセルマ』(原題:Selma)などがあり、これらの作品は日本語にも翻訳されています。

橋本香折(訳)

橋本香折(はしもと かおり)さんは、1958年東京都生まれの日本の小説家、翻訳家です。青山学院大学文学部を卒業後、学習院大学大学院文学研究科独文学専攻博士後期課程を満期退学されました。ドイツ語の絵本翻訳や児童小説の執筆で知られ、別名義として小森香折も使用されています。
1997年、『ぼくにぴったりの仕事』で第12回毎日新聞小さな童話大賞を受賞。2002年にはファンタジー小説『ニコルの塔』で第5回ちゅうでん児童文学賞大賞を受賞し、翌年には第22回新美南吉児童文学賞も受賞しています。その他の著作に『さくら、ひかる。』『うしろの正面』『時知らずの庭』などがあり、翻訳作品としてはユッタ・バウアーの『おこりんぼママ』『色の女王』やリスベート・ツヴェルガーの『ロミオとジュリエット』など、多くのドイツ語絵本を日本語に紹介しています。
小森氏はドイツ語教師としての経験を活かし、翻訳と創作の両面で活躍されています。その作品は、子どもから大人まで幅広い読者層に親しまれています。

おすすめ対象年齢

『色の女王』は、主に 5歳以上 の子どもを対象とした絵本です。物語の中で描かれる色と感情の繊細な関係や、哲学的なテーマは、少し大きな子どもや大人にも深く響く内容となっています。シンプルなイラストとわかりやすいストーリーは小さな子どもにも楽しめますが、感情や色彩の象徴的な意味を理解し始める幼児期後半から、小学生、中高生、大人まで幅広い層におすすめできる作品です。感情表現を学ぶ教育的な要素もあり、読み聞かせや親子での鑑賞にも適しています。

レビュー

ユッタ・バウアー作の『色の女王』は、色と感情が密接に絡み合う独特な視点が印象的な絵本です。一見シンプルな物語とイラストですが、色彩が象徴する感情の豊かさや複雑さを見事に表現しています。特に、主人公の「色の女王」がそれぞれの色と対話する中で喜びや怒り、悲しみといった感情が生まれ、それが物語の展開とともに視覚的に伝わる点が素晴らしいです。また、色が感情の象徴であるだけでなく、時にはその感情を制御する難しさも描かれており、人生における感情との向き合い方を優しく教えてくれる哲学的な一面も感じられます。子どもはもちろん、大人も読み手として新しい発見を得られる、奥深い作品です。

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