
ビアトリクス・ポターの『ピーターラビットのおはなし』(The Tale of Peter Rabbit)は、1902年に発表され、世界中で愛される児童文学の名作です。日本語版は2019年に福音館書店からリニューアル出版されています。主人公はやんちゃで好奇心旺盛なうさぎのピーター。彼はマクレガーさんの畑に忍び込み、美味しそうな野菜を夢中で食べるものの、見つかって逃げることに。お母さんに注意されていたにもかかわらず危険な冒険に出るピーターの姿が、子どもたちの共感を呼び、愛らしいイラストとともに緊張と解放のストーリーが魅力的です。
略歴
ビアトリクス・ポター
ビアトリクス・ポター(Beatrix Potter,1866 – 1943)は、イギリスの絵本作家であり、自然科学者、環境保護活動家でもあります。裕福な家庭に生まれ、幼少期から自然や動植物に興味を持ちました。独学で絵を学び、観察力に優れた彼女は、細密な動植物のスケッチで注目されます。1902年、代表作『ピーターラビットのおはなし』を発表し、大ヒットとなりました。その後も動物を主人公とした絵本を次々と執筆し、児童文学の金字塔を築きました。また、晩年は湖水地方の環境保護に尽力し、多くの土地をナショナル・トラストに寄贈しました。彼女の作品は、今も世界中で愛されています。
石井桃子(訳)
石井桃子(いしいももこ、1907 – 2008)さんは、日本の児童文学作家・翻訳家で、子どもたちに優れた海外文学を紹介することに尽力しました。東京大学文学部を卒業後、出版社で働きながら翻訳を始め、やがて児童文学の世界で活躍するようになります。彼女は翻訳の名手として知られ、アメリカやヨーロッパの名作を日本語に翻訳し、多くの子どもたちに親しまれる作品を生み出しました。特に『クマのプーさん』や「ピーターラビット」シリーズの翻訳で高い評価を得ています。また、児童書編集者としても活動し、日本初の絵本専門出版社「岩波書店の岩波こどもの本」シリーズの立ち上げに携わり、質の高い絵本の普及に貢献しました。晩年には、自らの創作活動にも力を入れ、『ノンちゃん雲に乗る』などの作品で知られています。彼女の翻訳は、原作の魅力を忠実に伝えるだけでなく、日本語の美しさを引き出し、親しみやすい表現を用いる点で評価されています。彼女の活動は、日本における児童文学の発展に大きく寄与し、現在も多くの読者に影響を与え続けています。彼女の業績は、日本と世界の子どもたちを繋ぐ架け橋として輝き続けています。
おすすめ対象年齢
この絵本は3歳から6歳の幼児を主な対象としていますが、物語の深みやイラストの魅力から、小学校低学年の子どもたちにも楽しまれています。
レビュー
『ピーターラビットのおはなし』は、ビアトリクス・ポターならではの温かみと自然の美しさが感じられる名作です。小さなピーターラビットの好奇心といたずら心が、菜園での冒険を生き生きと描き出し、危険と楽しさが交錯する瞬間にドキドキが広がります。繊細な水彩画で表現されたイギリスの田園風景は、静かで穏やかでありながらも生命の躍動を伝え、読者を優しい世界へと誘います。シンプルな物語の中に、失敗や反省、そして成長の要素が巧みに織り込まれており、子どもだけでなく大人にも深い感動を与える一冊だと感じます。