わにわにのおおけが/小風 さち

『わにわにのおおけが』(文:小風さち/絵:山口マオ)は、2010年に福音館書店から幼児絵本シリーズとして刊行。ある日、工作に夢中になったわにわにが、ハサミでうっかり指を切ってしまい、「うおぉ!」と慌てて薬を塗り、包帯をぐるぐる巻き。その姿に満足げな彼が、また工作を再開!「ぐるぐるぐる…よーしよし」のリズム感が楽しく、木版画ならではのザラッとした質感とユーモラスなストーリーが絶妙にマッチ。最後に完成した工作の姿が分かるページは、子どもも大人もニッコリしちゃう仕掛けです

略歴

小風 さち

小風さち(こかぜさち,1955年東京生まれ)は、1977〜87年にイギリス・ロンドン郊外で暮らし、帰国後に絵本作家として活躍。代表作に「わにわに」シリーズや『とべ!ちいさいプロペラき』『はちみついろのうま』などがあります。翻訳絵本や児童書の訳書も手がけ、『ゆびぬき小路の秘密』で1994年に野間児童文芸新人賞を受賞。また、福音館書店や講談社などの児童書出版社を中心に精力的に作品を発表し、現在は東京都在住。独特のユーモアとリズムある文章で、子どもの心をつかみ続けています。

山口 マオ(絵)

山口マオさん(やまぐちまお,1958年千葉県生まれ)は、東京造形大学絵画科を卒業後、木版画を主軸にイラストレーター、版画家として活動。絵本「わにわに」シリーズのほか、『てのひらむかしばなし 十二支のはじまり』や『かにのしょうばい』『なりました』などを手がけ、雑誌・広告・グッズなど多岐に展開。福音館書店、岩波書店、鈴木出版などで作品を発表。絵本づくりでは、作家との共同作業を経て唯一無二の世界観を築くスタイルが特徴です。

おすすめ対象年齢

おすすめの年齢は2〜3歳から。繰り返しのある擬音やセリフ(「ぐるぐるぐる」など)が多く、幼児でも声に出してマネしたくなるリズム感が◎。さらに、少しだけケガする場面も出てくるので、お世話するシーンを通して“やさしさ”や“共感”の心も育てられる一冊です。包帯を一緒に巻くごっこ遊びにもつながりやすく、読み聞かせ・遊びタイムにピッタリ!

レビュー

この本の魅力は、わにわにの“ザ・ワニ”な見た目と無邪気な行動のギャップ!工作に夢中で指を切ってしまうハプニングも、彼の大げさな反応と木版画の質感が手伝ってコミカルに感じられ、つい笑っちゃいます。包帯を巻いて満足する姿はまるでヒーロー気分!? 擬音のリズムが繰り返されるたび、読み手も自然と声に抑揚をつけたくなって、家族みんなで参加できる雰囲気。最後に何を作ったのか、“あ、これだったんだ!”と分かる瞬間にハッとさせられつつもほっこり。子どもと一緒に「あー楽しかった!」と心から笑い合える、絵本の時間がほっこりになる一冊です。