
レオ・レオニ作、谷川俊太郎訳の『じぶんだけの いろ』は、原作名「A Color of His Own」として1975年にアメリカで発行されました。本作は、自分の色を持たないカメレオンが主人公で、孤独を感じる中で友達を見つけ、自分らしさとは何かを探求する物語です。レオニ独特の柔らかな色彩とシンプルな言葉で、友情やアイデンティティの大切さを描いています。この絵本は、幼い読者に寄り添いながらも、大人にも深いメッセージを与える普遍的な魅力を持っています。
略歴
レオ・レオニの略歴
レオ・レオニ(Leo Lionni, 1910-1999)は、オランダのアムステルダムで生まれた絵本作家であり、デザイナー、芸術家です。幼少期をオランダやイタリア、アメリカで過ごし、大学では経済学を学びましたが、後にアートの道へ進みました。アメリカに移住し、広告業界で成功を収める一方、モダンアートにも深い関心を寄せました。50歳を過ぎてから絵本作家としての道が開かれます。彼の作品は、美しいコラージュや温かいストーリーが特徴で、『スイミー』『フレデリック』『アレクサンダとぜんまいねずみ』などが代表作です。子どもたちに創造力や多様性の大切さを伝える名作を多く残しました。
谷川俊太郎の略歴
谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)は、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこもこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠しました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。
おすすめ対象年齢
『じぶんだけの いろ』の対象年齢は、概ね3歳から6歳程度が適しています。短い文章とカラフルなイラストが、小さな子どもにも分かりやすく、自己理解や他者とのつながりを考え始める幼児期にぴったりです。また、小学校低学年の子どもにも共感を得られる内容となっています。
レビュー
『じぶんだけの いろ』は、単に子ども向けの絵本にとどまらず、人間関係やアイデンティティについて深く考えさせられる作品です。カメレオンが色を変える特性を使って、「自分らしさ」とは何かをユーモラスかつ感動的に描いています。特に最後の友情のシーンは胸に沁み入り、読後感がとても温かいです。谷川俊太郎さんの訳文は簡潔でありながら詩的で、物語のテーマを見事に引き立てています。この絵本を読むことで、子どもはもちろん、大人も自分らしさや友達の大切さについて改めて考えるきっかけを得られるでしょう。