アーノルド・ローベル作『マスターさんとどうぶつえん』(原題 A Zoo for Mister Muster、アメリカ、1962年初版、日本語版は2017年 好学社)は、ローベルの記念すべきデビュー作です。動物園が大好きなマスターさんは、晴れた日には必ず出かけて動物たちと仲良しに。けれど閉園時間が近づくと、別れが寂しくて胸がしんとします。そんなある日、ぞうが飼育係のポケットから鍵を抜き取り、大冒険が始まります。動物たちとマスターさんが繰り広げるちょっとした騒動と、最後に訪れる心あたたまる展開は、ユーモラスでありながら優しい余韻を残す一冊です。
略歴
アーノルド・ローベル
アーノルド・スターク・ローベル(Arnold Lobel、1933年 – 1987年)は、ロサンゼルス生まれの画家兼作家。プラット美術学校卒業後、児童書を中心に執筆・イラストを手がけました。代表作は「がまくんとかえるくん」シリーズ(1970‑79年)、Caldecott Honor『ふたりはともだち』、Newbery Honor『ふたりはいつも』、Caldecott Medal『ローベルおじさんのどうぶつものがたり』など、多くの賞を受賞。子どもの心に寄り添う優しいタッチとユーモアを織り交ぜた作風は、現代でも愛され続け、1970~80年代にかけ日本でも翻訳・出版が進みました。
小宮 由(訳)
小宮由(こみやゆう,1974年生まれ)さんは東京都出身の翻訳家。学生時代を熊本で過ごし、大学卒業後、児童書出版社に入社。2001年に留学し、帰国後はいくつかの出版社勤務を経て、翻訳家として活動を開始しました。2004年から東京・阿佐ヶ谷で家庭文庫「このあの文庫」を主宰しています。家族も児童書に関わる仕事をしており、祖父はトルストイ文学の翻訳家・北御門二郎です。
おすすめ対象年齢
『マスターさんとどうぶつえん』は、4歳ごろから小学校低学年までの子どもにおすすめの絵本です。動物たちの愉快な行動やマスターさんとの交流は小さな子どもも楽しめ、読み聞かせにぴったりです。また、ちょっとしたハプニングとハッピーエンドの構成は、自分で読み始める子どもにもちょうど良い内容です。
レビュー
ローベルのデビュー作と聞いて手に取ると、その時点から彼のユーモアと優しさがあふれているのに驚かされました。動物園を舞台にしたお話は子どもにとってワクワク感が強く、動物たちが鍵を使って冒険に出るという展開は楽しい驚きです。最後にはマスターさんと動物たちとの絆を感じる温かな余韻があり、読み終わるとほっとした気持ちに。単なるドタバタではなく、ローベルらしい「心に残る優しさ」がすでに光っている作品で、大人も一緒に楽しめる絵本だと思いました。


