アルド・わたしだけのひみつのともだち/ジョン・バーニンガム

『アルド・わたしだけのひみつのともだち』は、ジョン・バーニンガムの“Aldo”を、谷川俊太郎さんが日本語に訳した作品。原作は1993年にイギリスで刊行され、日本語版は1991年12月にほるぷ出版から登場しました。物語は「自分には誰にも見えない特別な友だちがいる」と語る少女が主人公。寂しいときや困ったとき、その友だちアルドがそっと寄り添ってくれる心象風景が淡く描かれています。バーニンガムのやさしい線と淡い色合いが、秘密の友だちとの絆をそっと包み込むようで、読後には胸がじんわり温かくなる名作です。

略歴

ジョン・バーニンガム

ジョン・バーニンガム(John Burningham,1936‑2019)はイギリス出身の絵本作家・イラストレーター。ケイト・グリーナウェイ賞を2度受賞するなど、その独特の線と繊細な色使いで世界中にファン多数。代表作には『Mr Gumpy’s Outing』や『Granpa』などがあり、日常の中にある小さなドラマやユーモアを捉える視点が魅力です。1993年刊の『クリスマスのおくりもの』もそんな作風が光る一冊。絵本界の巨匠として、半世紀以上にわたり子どもにも大人にも愛され続けています。

谷川俊太郎(訳)

谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)さんは、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこ もこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠されました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。

おすすめ対象年齢

この絵本は4〜6歳の幼児から、小学校低学年向け。良く知られた“見えない友だち”のテーマは、多くの子どもが共感できる世界です。文字量も絵の余白を活かした構成で、静かに語りかけるような読み聞かせにぴったり。初めての感情や想像の深さに触れられる、ちょっと大人びた感受性を育む一冊です。

レビュー

この絵本、読んでいて本当にホッとするんです。外見には特別なことがない少女と、彼女だけに見えるアルドという存在。だけど、アルドがいると世界がちょっと柔らかくなる。「本当にいるかどうかはわからないけど、悲しいときでも大丈夫」という安心感が透けて見えて、共感しました。バーニンガムの絵は余白が多く、言葉少なめ。それが余計に想像の余地をくれて、心に静かに響く。谷川俊太郎さんの訳もセリフが自然で、心象世界へスッと入り込める。見えない友だちを持つ子どもにも、そしてかつてそんな友だちがいた大人にも、じんわり寄り添ってくれる一冊。読むたびに「孤独を抱えても、一人じゃないよ」とそっと教えてくれる、静かで深い絵本です。