あんぱんまん/やなせたかし

やなせたかしさんの絵本『あんぱんまん』は、1973年にフレーベル館から出版された初代アンパンマンの物語です。今のアニメ版とは少し違っていて、ほのぼのした雰囲気ながらも“おなかがすいて困っている人に自分の顔を分けてあげる”という、深いテーマが描かれています。ヒーローといえば力や戦いが定番ですが、このアンパンマンは「やさしさ」で世界を救うという新しいタイプのヒーローなんです。時代を超えて愛され続ける理由が、この一冊からも伝わってきますよ。

略歴

やなせ たかし

やなせたかしさんは1919年、高知県に生まれました。戦後は広告デザインやイラストの仕事を経て、詩や童話、漫画の世界へ。1973年に『あんぱんまん』を発表し、1988年からアニメ化され大ブレイクしました。アンパンマンの主題歌「アンパンマンのマーチ」の作詞も本人が手がけています。テーマは“本当の正義とは何か”。晩年も精力的に活動を続け、2013年に94歳で逝去。子どもたちに“やさしさの心”を伝え続けた、日本を代表する作家です。

おすすめ対象年齢

『あんぱんまん』は、3歳〜6歳くらいの未就学児におすすめの絵本です。お話のテンポや絵のわかりやすさは、小さなお子さんにもぴったり。特に「自分を犠牲にして誰かを助ける」というアンパンマンの行動は、心の成長を促してくれる内容です。大人が読み聞かせながら「優しさとは何か」を一緒に考えるきっかけにもなりますよ。

レビュー

初めてこの絵本を読んだとき、「こんなヒーローがいるのか!」と衝撃を受けました。アンパンマンは、戦って勝つタイプじゃなくて、自分をちぎって相手にあげちゃう優しすぎるヒーロー。しかもその姿が、ちょっと切なくて、でもすごく温かい。今のアニメのにぎやかなアンパンマンも好きですが、この原点となる一冊には、やなせさんの深いメッセージがぎゅっと詰まっています。小さな子どもだけじゃなく、大人が読んでも「生きる意味」や「正義ってなんだろう」と考えさせられる作品です。