『アンパンマンとらくがきこぞう』は、やなせたかしさんが1983年に描いたミニブックシリーズの1冊で、アンパンマンが“らくがきこぞう”と出会って繰り広げるちょっと不思議で楽しいお話です。自由気ままに落書きをしては、周囲を困らせてしまうらくがきこぞう。でも、アンパンマンは頭ごなしに怒らず、対話を通じて“表現すること”の意味や“思いやり”を伝えようとします。子どもたちの想像力と優しさに語りかける、小さな一冊に大切なメッセージがぎゅっと詰まっています。
略歴
やなせ たかし
やなせたかしさんは1919年、高知県に生まれました。戦後は広告デザインやイラストの仕事を経て、詩や童話、漫画の世界へ。1973年に『あんぱんまん』を発表し、1988年からアニメ化され大ブレイクしました。アンパンマンの主題歌「アンパンマンのマーチ」の作詞も本人が手がけています。テーマは“本当の正義とは何か”。晩年も精力的に活動を続け、2013年に94歳で逝去。子どもたちに“やさしさの心”を伝え続けた、日本を代表する作家です。
トムス・エンタテインメント(作画)
トムス・エンタテインメントは、1946年に設立された日本の老舗アニメ制作会社で、現在はセガグループの一員です。『それいけ!アンパンマン』『名探偵コナン』『ルパン三世』『巨人の星』など、時代を超えて愛される作品を数多く手がけてきました。高い作画技術と安定した制作体制で、国内外のファンに支持されています。また、アニメーター育成のための教育機関を設けるなど、次世代のクリエーター育成にも積極的に取り組んでおり、日本のアニメ文化の発展に貢献し続けています。
おすすめ対象年齢
『アンパンマンとらくがきこぞう』は、3歳〜6歳くらいの子におすすめです。好奇心旺盛な年ごろの子どもたちにぴったりのテーマで、いたずらや自己表現といった身近な内容が描かれています。読み聞かせにも適していて、子どもが「ダメなこと」と「やさしい心」のバランスを自然に学べるようになっています。短めのお話なので、集中力が短いお子さんにも◎。
レビュー
「いたずら=悪」じゃないんだなあと、読んでいてハッとさせられました。らくがきこぞうは一見ワガママだけど、実は何かを表現したい気持ちがあるだけ。アンパンマンが怒らずにその気持ちに向き合ってくれる姿に、優しさと寛容さの大切さを感じました。子どもの行動をただ「やめなさい」と止めるんじゃなく、ちゃんと理由を聞いてあげることの大切さを、大人にも教えてくれる作品です。小さなエピソードだけど、心にじんわり残る一冊でした。