『ババールといたずらアルチュール』は、ロラン・ド・ブリュノフ作・絵、やがわすみこ訳による絵本で、原題は “Babar et ce coquin d’Arthur”。フランスでの初出版は1946年、日本語版は評論社から1975年初版として刊行されました。物語は、夏の海辺の別荘が舞台。ババール一家がいとこのアルチュールや、さるのゼフィールと一緒に遊びに行くはずが、いたずら好きなアルチュールが飛行機の翼で遊んでしまい…!勇気があるもののやんちゃな彼のドキドキ大冒険がコミカルに描かれています。ロランのユーモアあふれるタッチと、やがわすみこさんによる自然な日本語訳がマッチして、笑いと安心感がいっぱいの1冊です。
略歴
ロラン・ド・ブリュノフ
ロラン・ド・ブリュノフ(Laurent de Brunhoff、1925年─2024年)は、フランス・パリ生まれの絵本作家・画家。ジャン・ド・ブリュノフの長男で、父の死後、ババールの物語を継承。グランド・ショミエール芸術学校で学んだ後、1946年に『ババールといたずらアルチュール』で自作を発表し、以降40作以上のババール新作を制作しました。1985年にアメリカへ移住し、アニメーション制作などにも携わりながら活動。パリとフロリダを行き来し、芸術文化に貢献。2024年、98歳でキーウェストにて永眠されました。父から息子へ受け継がれた象の王国の魅力は、ロランの手で世界中に広がりました 。
やがわすみこ(訳)
やがわすみこ(1930年 – 2002年)は、東京出身の詩人・小説家・翻訳家です。東京女子大・学習院大卒業後、岩波書店の校正者を経て、英仏独文学の翻訳家として活躍しました。詩集『ことばの国のアリス』や小説『失われた庭』などの著作があり、児童書やファンタジーの名訳者としても名を馳せました。また、「ぞうのババール」シリーズを含む多数の絵本の訳を手がけました。その豊かな文学的背景と確かな翻訳技術によって、日本の児童文学界に大きな影響を残しています。
おすすめ対象年齢
この絵本は4〜7歳くらいにぴったり。いたずら小僧アルチュールの元気いっぱいな行動が、語りも軽快でテンポよく展開され、子どもの興味を引きます。読み聞かせして楽しむのはもちろん、小学校低学年の自分読みにも最適です。絵が大きく明るいので、文字がまだ読めなくてもイラストから物語を想像できるのも魅力です。
レビュー
アルチュールの自由すぎる行動にハラハラしつつ、最後には「やっぱり憎めないなぁ」と思わせてくれる一冊でした。いたずらっ子ってどこの国にもいるけれど、その元気さがときにトラブルを招いても、ちゃんと周りが助け合うあたたかい雰囲気が心地よいです。ロランの絵は、父ジャンのスタイルを受け継ぎつつも、より色彩がはっきりしていて元気いっぱい。飛行機に乗ってしまう大胆さも、子どもの夢や冒険心をうまく表現していて、「ダメだけど面白い!」と笑ってしまいます。読み終わったあとに家族で「自分もこんな子だったかも」と話せるような、ほのぼの系冒険絵本です。