ババールとサンタクロース/ジャン・ド・ブリュノフ

『ババールとサンタクロース』(原題:Babar et le Père Noël)は、ジャン・ド・ブリュノフが描く、ババールのちょっと特別なクリスマスの冒険絵本です。フランスで1930年代に描かれ、日本では1975年に評論社からやがわすみこ訳で刊行されました。物語は、象の子どもたちが「サンタクロースに会いたい!」と願ったことをきっかけに、ババールがサンタを探して旅に出るお話。図書館で調べたり、学者に聞いたり、小犬と出会ったりしながら、ついに本物のサンタにたどりつきます。そして忙しいサンタの代わりに、ババール自身がサンタの衣装を着て、象の国の子どもたちにプレゼントを届けるという、心温まるストーリーです。

略歴

ジャン・ド・ブリュノフ

ジャン・ド・ブリュノフ(Jean de Brunhoff、1899年 – 1937年)は、フランス・パリ生まれの画家であり、「ぞうのババール」シリーズの生みの親です。もともとは画家として活動していましたが、妻セシルが子どもたちに話していた象の物語をもとに、ジャンが絵をつけて絵本化したのがきっかけで、1931年に『ぞうのババール』第1作を出版。洗練されたイラストと物語は瞬く間に人気となり、フランス国内外で愛されるシリーズとなりました。わずか37歳で永眠されたものの、息子ローランがその後を継ぎ、シリーズは今も続いています。優れたビジュアルと物語性で、絵本界に大きな足跡を残した作家です。

やがわすみこ(訳)

やがわすみこ(1930年 – 2002年)は、東京出身の詩人・小説家・翻訳家です。東京女子大・学習院大卒業後、岩波書店の校正者を経て、英仏独文学の翻訳家として活躍しました。詩集『ことばの国のアリス』や小説『失われた庭』などの著作があり、児童書やファンタジーの名訳者としても名を馳せました。また、「ぞうのババール」シリーズを含む多数の絵本の訳を手がけました。その豊かな文学的背景と確かな翻訳技術によって、日本の児童文学界に大きな影響を残しています。

おすすめ対象年齢

『ババールとサンタクロース』は、4歳から8歳くらいの子どもにぴったりの絵本です。少し長めのお話ですが、ババールの冒険やサンタとのやりとりがテンポよく描かれていて、飽きずに楽しめます。読んであげるなら4歳くらいから、自分で読むなら小学校低学年がおすすめ。クリスマスに夢をふくらませる時期の子どもたちにぴったりの内容で、読み聞かせにも最適です。

レビュー

ババールがサンタクロースに会うために調べて、旅に出て、ついには“代わりにプレゼントを配る”という展開がとても素敵!ただサンタを探すだけではなく、ババール自身がみんなの願いをかなえる存在になるところが温かくて感動します。図書館で調べたり、学者に聞いたりといった描写もユニークで、知的な冒険の面白さもあります。サンタさんに衣装を譲り受けたババールが、自分の国の子どもたちに喜びを届ける姿には思わず笑顔に。やがわすみこさんの訳文もリズムがよく、読み聞かせにもぴったり。クリスマス前に何度でも読みたくなる一冊です。