かにこちゃん/きしだ えりこ

『かにこちゃん』は、文:きしだえりこ、絵:ほりうちせいいちにより、くもん出版から2008年に刊行された絵本で、「はじめてであうえほんシリーズ」の第1弾です。この作品は、赤をテーマに、朝日が昇り夕日が沈むまでの海辺で、赤いカニ「かにこちゃん」が主人公として一日を過ごす様子を描いています。波しぶき、燃えるような赤い夕日、打ち寄せる波、足音を表す「すこすこすこすこ」といったオノマトペなど、リズミカルで想像力をかき立てる言葉と共に、海辺の風景が鮮やかに展開されます。もともとは1967年に世界出版社から刊行された絵本『からーぶっくふろーら かにこちゃん』が原作で、これを加筆・修正し復刊された版で、多くの子どもたちに親しまれてきた作品です。見た目の色使いも鮮やかで、海の赤や空の赤、砂浜の赤など“赤”が生き生きと画面を満たしています。

略歴

岸田衿子

岸田 衿子(きしだ えりこ、1929年 – 2011年)さんは東京生まれの詩人・児童文学作家・翻訳家。東京芸術大学油絵卒後、絵本や児童書を多数執筆・翻訳し、アニメ『赤毛のアン』や『フランダースの犬』などTV主題歌の作詞も手がけました 。1966年の『かばくん』(中谷千代子絵)でサンケイ児童出版文化賞受賞。1971年に訳した『どろんここぶた』をはじめ、『はろるどのふしぎなぼうけん』『ルシールはうま』などローベル作品の翻訳でも知られています。詩作にも優れ、生涯を通じて子どもたちと詩・物語をつないできた存在です。

堀内 誠一(絵)

堀内誠一(ほりうちせいいち,1932年 – 1987年)さんは、東京府向島(現・墨田区)出身のグラフィックデザイナー、エディトリアルデザイナー、絵本作家です。父・堀内治雄も図案家で、堀内は幼少期からデザインに親しみました。14歳で伊勢丹百貨店に入社し、ウィンドウディスプレイやレタリングの仕事を担当。その後、アド・センター株式会社を設立し、雑誌『an・an』『POPEYE』『BRUTUS』『Olive』のロゴデザインを手がけました。また、絵本作家としても活躍し、『ぐるんぱのようちえん』や『たろうのおでかけ』など、多くの作品を残しました。1974年から1981年までフランス・パリ郊外に移住し、現地の文化や芸術にも触れ、パリ在住日本人向けミニコミ誌の創刊に参画しました。1987年に永眠されました。

おすすめ対象年齢

この絵本『かにこちゃん』の対象年齢は、主に 0~2歳の乳幼児 が最も適していると思います。理由としては、言葉数が少なくリズム感のあるオノマトペが多いため、聴くこと・見ることで楽しむことができる点が強いからです。絵も大きくはっきりしていて、色彩が鮮やかなので視覚的刺激としても魅力があります。読み聞かせする大人の声や表情と一緒に楽しむことで、言葉への興味や色・形の感覚が育ちやすいです。

レビュー

私の感想として、『かにこちゃん』は、海辺の景色と “赤” の色彩が非常に印象的で、ページをめくるたびに視覚的な冒険をしているようなワクワク感があります。かにこちゃんの動き(横歩き、足音「すこすこすこすこ」など)や波の音、朝日から夕日までの時間の流れが、リズムある言葉と共に感じられて、小さな子どもでも自然と絵本の世界に入り込めるなと思います。特に夕日の場面や波打ち際の描写は詩的で、親が語りかけながら読むと、一緒に“美しさ”を味わえる時間になります。0歳、1歳の子がこの一冊をきっかけに、「もっと見たい・もっと聴きたい」と思える入り口になってくれる感じがあり、親子の絆も暖かく深まる絵本です。色彩豊かなアートとしても魅力が高く、大人が見ても目がうれしくなる一冊だと思います。