『くまのビーディーくん』(原題 Beady Bear)は、アメリカの絵本作家ドン・フリーマンが1954年にアメリカで初出版した作品。日本語版は松岡享子さんの翻訳で1998年に偕成社から刊行されました。ゼンマイじかけのくま、ビーディーくんは仲良しの男の子がいないあいだ、家を飛び出して“ほんもののくま”のように暮らしてみたいと冒険に出かけます。ほら穴や森で過ごしてみるけれど、そこには思わぬ不便やさみしさも…。けれど最終的に気づくのは「自分にとって大切な居場所はどこか」ということ。『コールテンくん』で知られる作者が描く、友情と安心をめぐる物語です。
略歴
ドン・フリーマン
ドン・フリーマン(Don Freeman, 1908-1978)は、アメリカ出身の画家・絵本作家・イラストレーター。ニューヨークで画家として活動したのち、1950年代以降、児童書や絵本の執筆・挿絵を多数手がけました。代表作といえばまず『Corduroy』(日本語版『くまのコールテンくん』)が長年にわたって親しまれており、全米教育協会「教師が選ぶ子ども向け本TOP100」にも選ばれています。続編として1978年に『コーちゃんのポケット』(A Pocket for Corduroy)も書かれ、絵本だけでなく、背景にニューヨークの街や人々への観察眼からくる静かな感情描写がある点が高く評価されています。
松岡 享子(訳)
松岡享子(まつおかきょうこ,1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。代表作に『とこちゃんはどこ』『おふろだいすき』、また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。
おすすめ対象年齢
この絵本は、幼児から小学校低学年くらいにおすすめです。ビーディーくんの冒険は子ども心をワクワクさせながらも、「帰る場所の大切さ」や「人とのつながり」に自然と気づかせてくれる内容なので、読み聞かせにもぴったり。ひとり読みを始めた子にも楽しめる作品です。
レビュー
『くまのビーディーくん』を読んで、子ども時代に一度は感じる「自分でやってみたい!」という冒険心がすごく伝わってきました。外の世界は刺激的だけど、同時にさみしさや不安もあって、最後に「やっぱりここが自分の場所」と思える安心感にホッとします。ぬいぐるみやゼンマイじかけのおもちゃがただの“物”ではなく、大切な存在として描かれるところがじんわり心に残りました。『コールテンくん』と同じく、温かい余韻をくれる名作だと思います。


