ヨシタケシンスケ作・絵の絵本『しばらくあかちゃんになりますので』は、2024年にPHP研究所から発行されました。
物語は、赤ちゃんのお世話で忙しいママにかまってもらえないみーちゃんが、自分も赤ちゃんになろうと決意するところから始まります。おしゃぶりをくわえて寝転がるみーちゃんですが、お菓子が食べられないことに気づき、赤ちゃんタイムを終了します。一方、家事に追われて疲れたママも「しばらくあかちゃんになるわ!」と宣言し、赤ちゃんごっこを始めます。家族全員が赤ちゃんになりきるユーモラスな展開を通じて、家族の絆や役割について考えさせられる作品です。
略歴
ヨシタケシンスケ(本名:吉竹伸介)さんは、1973年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。筑波大学芸術専門学群を卒業。さらに、同大学大学院芸術研究科総合造形コース修士課程を修了しています。
2013年、初のオリジナル絵本『りんごかもしれない』を発表し、独特の視点とユーモラスな表現で注目を集めました。同作はMOE絵本屋さん大賞第1位や第61回産経児童出版文化賞美術賞を受賞しています。
その後も、『ぼくのニセモノをつくるには』、『もうぬげない』、『このあとどうしちゃおう』など、次々と話題作を発表。特に『もうぬげない』は、2017年にボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得ています。彼の作品は、日常の何気ない疑問や想像をユーモラスに描き、子どもから大人まで幅広い世代に共感されています。また、児童書の挿絵や装画、エッセイの執筆など、多岐にわたる分野で活躍しています。
2022年6月時点で、彼の絵本の累計発行部数は約600万部に達し、10か国以上で翻訳出版されています。2児の父でもあり、家族との日常から得られるインスピレーションが作品に反映されています。その独特の発想と温かみのある作風で、日本を代表する現代絵本作家としての地位を確立しています。
おすすめ対象年齢
この絵本は、4~5歳からの幼児を対象としています。 物語の内容やイラストは、幼児が共感しやすく、楽しめるよう工夫されています。また、家族全員が赤ちゃんになるというユーモラスな展開は、子どもだけでなく大人も楽しめる内容となっており、親子で一緒に読むのに適しています。
レビュー
ヨシタケシンスケさんの『しばらくあかちゃんになりますので』は、ユーモアと温かさが絶妙に融合した作品で、家族の絆や役割を考えさせられる絵本です。赤ちゃんになるという斬新な設定を通じて、忙しい現代の親子に向けたメッセージが込められています。みーちゃんの「赤ちゃんタイム」の奮闘や、家事で疲れたママが赤ちゃんになる場面は、誰もが一度は感じたことのある疲れや癒しを象徴的に描いており、読者の共感を誘います。
特に印象的なのは、この絵本が子どもだけでなく大人も楽しめる内容であることです。親が読むことで、日々の忙しさを少し忘れて「家族で笑う時間の大切さ」を思い出せるような作りになっています。また、ヨシタケさん独特の温かみのあるイラストとコミカルな表現が、物語の世界に引き込む力を持っています。
この絵本は、日常の中で感じる些細な不満や疲れをやさしく解消し、家族みんなで笑顔になれる作品です。読み終えた後は心がほっこりと温まり、親子で「赤ちゃんごっこ」をしてみたくなるような気持ちにさせられます。忙しい毎日に癒しを与えてくれる一冊として、多くの家庭で親しまれることでしょう。