
『こわがりハーブ えほんのオオカミにきをつけて』は、イギリスの作家ローレン・チャイルドによる絵本で、原作名は『Beware of the Storybook Wolves』です。 この作品は、物語の中のオオカミを恐れる少年ハーブが、夢の中ででオオカミと対峙し、勇気を振り絞って立ち向かう姿を描いています。チャイルドの独特なコラージュ技法とタイポグラフィーを駆使したイラストレーションが特徴的で、物語のユーモラスな展開と相まって読者を魅了します。原作は2000年にイギリスで発行され、日本語版はなかがわちひろさんの翻訳により2003年にフレーベル館から出版されました。
略歴
ローレン・チャイルド
ローレン・チャイルド(Lauren Child,1965生まれ)は、イギリスの著名な絵本作家であり、イラストレーターとしても活躍しています。彼女は3人姉妹の真ん中でイギリス・ウィルトシャーで育ちました、大学で美術やデザインを学んだ後、インテリアデザインやアニメーションの分野で働きました。しかし、その後は絵本制作に力を入れ、自身のユニークな作風で注目を集めました。
彼女の代表作である『チャーリーとローラ(Charlie and Lola)』シリーズは、子どもの独特な感性や日常の小さな出来事を楽しく描き、子どもから大人まで幅広い読者に愛されています。このシリーズはテレビアニメ化され、さらに人気を博しました。『ぜったいたべないからね』(I Will Not Ever Never Eat a Tomato)は、チャーリーとローラシリーズの最初の作品で、2000年に発表されると同時に話題となり、2001年にはケイト・グリーナウェイ賞を受賞しています。
彼女の作風は、コラージュや色鮮やかなデザインが特徴で、子どもたちの視点や心理を見事に表現しており、読者に楽しさと共感を与えます。また、ローレン・チャイルドは「クラリス・ビーン(Clarice Bean)」や「ルビー・レッドフォート(Ruby Redfort)」シリーズといった他の作品も執筆し、幅広い層に支持されています。彼女の作品は、世界中で翻訳され、国際的にも高く評価されています。
なかがわちひろ(訳)
なかがわちひろ(中川千尋)は、1958年に関東地方で生まれ、転勤族の家庭で育ちました。小学4年生の秋から中学3年生の秋まで仙台で過ごし、高校時代にはアメリカ・サンディエゴに1年間留学しました。東京藝術大学美術学部芸術学科を卒業後、劇団テアトル・エコーの座付き翻訳者としてコメディの翻訳に従事しましたが、子どもの本に強い関心を抱き、福武書店児童書編集部での翻訳活動を開始しました。以降、児童文学の作家、画家、翻訳家として多彩な作品を手がけています。翻訳作品には『ふしぎをのせたアリエル号』や『ちいさなあなたへ』などがあり、創作絵本には『のはらひめ』や「おたすけこびと」シリーズなどがあります。受賞歴も豊富で、『どうぶつがすき』で日本絵本賞翻訳絵本賞、『天使のかいかた』で日本絵本賞読者賞、『かりんちゃんと十五人のおひなさま』で野間児童文芸賞を受賞しています。彼女の作品は、子どもの豊かな感性を育むものとして高く評価されています。
おすすめ対象年齢
対象年齢は3歳から6歳、小学1年生向けとされています。物語の内容やイラストの表現が、幼児から小学校低学年の子どもたちの興味を引き、楽しめる構成となっています。ただし、オオカミが登場する場面があるため、感受性の強いお子さんには保護者の方が一緒に読み進めると良いでしょう。
レビュー
本作は、絵本の中のキャラクターが夢の中に現れるというユニークな設定が印象的です。ハーブの恐怖心と勇気が描かれた物語は、子どもたちに共感を呼び起こします。また、チャイルドの斬新なイラストレーションは、ページをめくるごとに新たな発見があり、視覚的にも楽しめます。物語と絵が一体となったこの作品は、子どもたちの想像力を刺激し、読み聞かせにも最適な一冊です。