ドン・フリーマンさん作、西園寺祥子さん訳の絵本『ターちゃんとペリカン』は、毎年夏に海辺でキャンプをする少年ターちゃんと、年老いたペリカンとの心温まる交流を描いた物語です。新しい長靴を波にさらわれてしまったターちゃんを、ペリカンがこっそり助けるという、種を超えた友情がテーマ。初版原題は『Come Again, Pelican』、初版発行国はアメリカ、初版発行年は1974年です。日本語版は1975年にほるぷ出版から発行されました。優しい水彩画のイラストと静かに流れる時間が、子どもたちの心をそっと包み込んでくれます。
略歴
ドン・フリーマン
ドン・フリーマン(Don Freeman, 1908-1978)は、アメリカ出身の画家・絵本作家・イラストレーター。ニューヨークで画家として活動したのち、1950年代以降、児童書や絵本の執筆・挿絵を多数手がけました。代表作といえばまず『Corduroy』(日本語版『くまのコールテンくん』)が長年にわたって親しまれており、全米教育協会「教師が選ぶ子ども向け本TOP100」にも選ばれています。続編として1978年に『コーちゃんのポケット』(A Pocket for Corduroy)も書かれ、絵本だけでなく、背景にニューヨークの街や人々への観察眼からくる静かな感情描写がある点が高く評価されています。
西園寺 祥子(訳)
西園寺祥子(さいおんじさちこ)さんは、翻訳家としてご活躍されています。彼女の翻訳は、原文の持つ温かさやユーモアを大切にし、日本語の響きを美しく表現することで知られています。代表作としては、同じくドン・フリーマンさんの作品である『くれよんのはなし』や『あしかのあーすけ』、そして『コーちゃんのポケット』などがあります。親しみやすい日本語で子どもたちに物語を届けました。繊細な言葉選びとあたたかな語り口が特徴で、コーちゃんのユーモラスさやリサとの絆がより身近に感じられる仕上がりになっています。そのほかにも欧米の絵本を日本に紹介する活動を通して、子どもたちが海外の文化や物語に触れるきっかけを広げてきました。
おすすめ対象年齢
対象年齢は、一般的に4歳から6歳くらいの子どもたちにぴったりです。文字数が少なめで、ひらがなとカタカナで書かれているから、ひらがなが読めるようになってきたお子さんから、読み聞かせが好きな大人まで、みんなで楽しめます。物語の雰囲気は少し大人っぽいので、子どもの成長に合わせて読み返すと、また違った感動があるかもしれませんね。
レビュー
この絵本は、言葉に頼らない心の通じ合いを静かに描いており、非常に心に残る作品だと感じました。少年ターちゃんとペリカンの間に交わされる、目に見えない絆が物語の核となっています。特に、ターちゃんの新しい長靴が流されちゃうシーンは、切ないけど、その後のペリカンの行動が本当に粋で、思わず「ペリカン、やるじゃん!」って言いたくなります。なんだか心にじわーっとくるものがあります。派手さはないけれど、心に残る、大切な一冊って感じがしますね。


