い~れ~て!/中川 ひろたか

中川ひろたかさん作、市居みかさん絵の『い~れ~て!』(2020年、金の星社)は、「友だちと遊ぶのがちょっと苦手」な男の子が主人公。彼は絵を描いて、その中のうさぎと空想の世界で遊んでいます。でも本当は、みんなと遊びたい気持ちもある。そんなある日、空想の世界でピンチに陥ったとき、現実の友だちが助けてくれて…ついに「い~れ~て!」と声をかけることができるように。勇気を出す大切さと、友だちとのつながりのあたたかさを描いた、共感たっぷりの一冊です。

略歴

中川 ひろたか

中川ひろたかさんは1954年埼玉県生まれ。シンガーソングライター、絵本作家、保育士などさまざまな顔を持つクリエイター。1995年に『さつまのおいも』でデビュー。また『ないた』で日本絵本賞受賞。モー・ウィレムズ作品をはじめ、翻訳絵本も多く手がけ、独自のユーモアある語り口が魅力。さらに作曲された『世界中のこどもたちが』などの歌が、保育現場でも広く親しまれています。

市居 みか(絵)

市居みか(いちいみか,1968年・兵庫県生まれ)さんは神戸大学教育学部美術科を卒業後、電器メーカーで企画・デザインに携わった後、絵本作家に転身。2001年に『ヘリオさんとふしぎななべ』(アリス館)で絵本作家デビュー。その後『イモムシかいぎ』『ろうそくいっぽん』『ねこのピカリとまどのほし』『いっぽんみちをあるいていたら』など多数の作品を発表し、2006年から始まる「こぶたのブルトン」シリーズでも人気を博しています。現在はイラスト・絵本制作のほか、ギャラリーでの個展やワークショップ講師、絵話塾での授業など幅広く活動中。温かみある画風と、登場キャラクターたちのユーモアあふれる表現が特徴です。

おすすめ対象年齢

『い~れ~て!』の対象年齢は、4歳頃から小学校低学年くらいが目安です。集団生活がはじまる幼児期や、友だちとの関わりが深まる時期にぴったりの内容で、「あそびたいけど言い出せない」気持ちに寄り添ってくれる絵本です。読み聞かせにもおすすめ!

レビュー

この絵本、とてもやさしくてじんわり心にしみました。主人公の「ぼく」が空想の世界に逃げこむ姿って、大人でも共感できる部分がありますよね。でも、誰かが自分を思って手を差し伸べてくれたときって、それだけで一歩前に進める勇気がわいてくる。最後に「い~れ~て!」と伝えるシーンは、思わず拍手したくなるような感動があります。子どもたちが読んだら、自分の気持ちを伝えてみようかな、と思えるはず。市居みかさんのやさしい絵もぴったりでした!