『コートニー』は、ちょっと変わった雑種犬のおはなし。見た目は地味で人気もないけど、じつはすご腕の名犬だった!料理も掃除もバイオリンもできて、ジャグリングまでしちゃう!…って、どんな犬!? って思うけど、読んでるうちに「この子、うちにも来てほしい…」と思っちゃうから不思議。火事のときに赤ちゃんを助けるシーンでは胸がじーん。でもその後、ふっと姿を消してしまう展開に、切なさとあたたかさがじわっと残るんです。バーニンガムの優しい絵と、谷川俊太郎さんの自然な日本語がぴったりマッチした、家族で読みたくなる一冊です。
略歴
ジョン・バーニンガム
ジョン・バーニンガム(John Burningham,1936‑2019)はイギリス出身の絵本作家・イラストレーター。ケイト・グリーナウェイ賞を2度受賞するなど、その独特の線と繊細な色使いで世界中にファン多数。代表作には『Mr Gumpy’s Outing』や『Granpa』などがあり、日常の中にある小さなドラマやユーモアを捉える視点が魅力です。1993年刊の『クリスマスのおくりもの』もそんな作風が光る一冊。絵本界の巨匠として、半世紀以上にわたり子どもにも大人にも愛され続けています。
谷川俊太郎(訳)
谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)さんは、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこ もこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠されました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。
おすすめ対象年齢
『コートニー』は3〜7歳くらいにおすすめ。絵と言葉がシンプルでわかりやすく、小学校前後の子どもでも心に響く内容です。日常とちょっとしたファンタジーが混ざったストーリーなので、読み聞かせにもぴったり。犬の活躍や最後の切なさが、子どもの想像力や感受性をふくらませてくれます。
レビュー
この本の魅力は、「世間に評価されない存在」が、実は家族を守るヒーローだったという逆転劇にあります。コートニーは見た目や年齢では判断されない、“本質”の大切さを静かに教えてくれる存在。料理やジャグリング、バイオリン演奏など不思議な才能を次々見せるたび、思わず笑顔に。それでも火事で赤ちゃんを救うシーンではうるっときちゃいました。最後に姿を消すことで、その愛が形あるものではなくても、ずっと家族の心に残るんだな…と思わず涙。谷川さんの訳も余計な飾りがなく、絵本の風情をしっかりと伝えてくれて、全体的にほんのり切なさと温かさが混じった珠玉の一冊。親子で何度も話したくなる、記憶に残る絵本です。