『ダンデライオン』(原題 Dandelion)は、アメリカの作家・画家ドン・フリーマンが1964年にアメリカ(Viking Press)で発表した絵本です。日本語版はアーサー・ビナードさんの翻訳で2005年に福音館書店から刊行されました。主人公はライオンのダンデライオン。キリンのジェニファーさんのお茶会に招かれて、おしゃれをして出かけますが、張り切りすぎて誰だかわかってもらえない羽目に。結局シンプルな姿に戻ったときに、本当の自分を受け入れてもらえるというストーリー。見栄や飾りよりも、自分らしさの大切さをユーモアたっぷりに伝えてくれる傑作絵本です。
略歴
ドン・フリーマン
ドン・フリーマン(Don Freeman, 1908-1978)は、アメリカ出身の画家・絵本作家・イラストレーター。ニューヨークで画家として活動したのち、1950年代以降、児童書や絵本の執筆・挿絵を多数手がけました。代表作といえばまず『Corduroy』(日本語版『くまのコールテンくん』)が長年にわたって親しまれており、全米教育協会「教師が選ぶ子ども向け本TOP100」にも選ばれています。続編として1978年に『コーちゃんのポケット』(A Pocket for Corduroy)も書かれ、絵本だけでなく、背景にニューヨークの街や人々への観察眼からくる静かな感情描写がある点が高く評価されています。
アーサー・ビナード(訳)
アーサー・ビナードさんは1967年、アメリカ・ミシガン州生まれの詩人・翻訳家。大学で英文学を学び、1990年に来日してから日本語で詩作や翻訳活動を始めました。2001年に詩集『釣り上げては』で中原中也賞を受賞し、そのユーモアと鋭い視点で知られています。翻訳では『葉っぱのフレディ』(レオ・バスカーリア作)や『おとなになるってどんなこと?』など多数を手がけ、日本と海外の言葉を行き来しながら作品を紹介してきました。『ダンデライオン』の訳でも、ユーモラスで親しみやすい日本語に仕上げ、原作の魅力を引き出しています。
おすすめ対象年齢
この絵本は、4歳ごろから小学校低学年くらいまでがおすすめです。ライオンがおしゃれをするユーモラスな姿は小さな子にも楽しく、自分らしさを大事にするメッセージは成長する子どもたちに響きます。読み聞かせでもひとり読みでも楽しめる作品です。
レビュー
『ダンデライオン』は、子どもだけでなく大人もクスッと笑えて、ちょっと考えさせられるお話でした。つい人に合わせて「よく見せたい」と思ってしまう気持ちって、誰でも経験があると思います。でも結局、自然体の自分が一番なんだよね、と優しく気づかせてくれるのが素敵でした。ドン・フリーマンの温かみのある絵と、アーサー・ビナードさんの軽やかな訳がマッチしていて、読後に心が軽くなる一冊です。


