おにのめん/川端 誠

『おにのめん』は、川端誠さん作・絵の落語絵本シリーズ第5巻。2001年にクレヨンハウスから発行されました。物語は関西のお話で、奉公に出た女の子・お春がお母さんに似た「おかん」のお面を大切にしていたところ、若旦那のいたずらで鬼のお面にすり替えられてしまいます。びっくりしたお春は「鬼が来た!」と驚いて家を飛び出し、その鬼のお面が草原で思わぬ役割を果たす展開がとっても楽しいです。落語の「来年のことを言えば鬼が笑う」ということわざがオチになっていて、ほっこり、クスッと笑える1冊。温かみあるイラストとちょっと切ないけど笑いもあるストーリーで、年末年始の読み聞かせにもぴったりです。

略歴

川端 誠

川端 誠(かわばた まこと)さんは、1952年に新潟県長岡市で生まれた絵本作家・イラストレーターです。多摩美術大学を卒業後、デザインやイラストレーションの仕事を経て、絵本制作の道に進みました。1980年代から絵本作家としての活動を本格化させ、特に古典落語や日本の伝統文化を題材にした作品で知られています。代表作には、落語絵本シリーズの『じゅげむ』『はつてんじん』『めぐろのさんま』などがあり、ユーモラスな語り口と温かみのあるイラストで、子どもから大人まで幅広い読者に親しまれています。また、古典文学を題材にした『平家物語』や『源氏物語』の絵本化にも取り組み、日本の伝統文化をわかりやすく伝える作品を多数手がけています。その功績により、数々の児童文学賞を受賞し、日本の絵本界において重要な存在となっています。

おすすめ対象年齢

この絵本は、少し文字数が多いので6歳頃の子どもへの読み聞かせに良いと思います。ちょっとしたドキドキやユーモアを理解でき、物語の落ち=「鬼が笑う」ということわざの意味にも興味を持ち始める年齢です。また、奉公や鬼のお面といった昔の暮らしや文化も自然に知ることができ、親子で読みながら「昔の生活ってどんなだった?」など会話が広がります。

レビュー

『おにのめん』、ほんとに心が温まる落語絵本です!お春が鬼お面をつけて進む場面、草によって顔を守るというユニークさに思わずニヤリ。クスッと笑えるけど、奉公先で頑張るお春の気持ちもちゃんと伝わってくるバランスが素敵。イラストも優しいタッチで、安心感があって子どもも安心。オチの「来年のことを言えば鬼が笑う」ってことわざにちゃんと繋がっていて、読み終えた後、「あぁ、日本のことわざって深い!」と感心しちゃいました。読み聞かせで声を出すと、笑いも驚きもあって、親も子も一緒に楽しめる。日本の昔話・文化を楽しく体験できる貴重な一冊です!