にじいろのさかな/マーカス・フィスター

作・絵:マーカス・フィスターさん、訳:谷川俊太郎さんの『にじいろのさかな』は、1995年に講談社から出版された人気絵本です。美しくにじいろに光るうろこをもつ「にじうお」が主人公。見た目は世界一美しいけれど、誰とも仲良くなれず孤独に悩む日々。ある日、洞穴にすむタコのおばあさんに悩みを打ち明けたことで、少しずつ変化が訪れます。自分の大切なものを分け与えることで、心のあたたかさや友情を知っていく、そんな優しい成長物語です。

略歴

マーカス・フィスター

マーカス・フィスター(Marcus Pfister)さんは、1960年スイス・ベルン生まれの絵本作家・イラストレーターです。ベルンの美術学校でグラフィックデザインを学び、広告業界を経て絵本の世界へ。1992年に発表した『にじいろのさかな(原題:der regenbogenfisch)』が世界的な大ヒットとなり、現在では50か国以上で翻訳され、多くの子どもたちに愛されています。透明感のある美しいイラストが特徴で、水彩とホイル加工を組み合わせた独自の技法も魅力です。

谷川俊太郎(訳)

谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)さんは、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこ もこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠されました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。

おすすめ対象年齢

『にじいろのさかな』は、対象年齢はおおよそ3歳〜7歳くらい。特に、友だちとの関わりや「わけあうことの大切さ」に興味を持ち始める幼児期や就学前の子どもたちにぴったりです。読み聞かせにも適していて、キラキラ光るうろこのしかけが小さな子の心をつかみます。

レビュー

この絵本は、見た目の美しさだけでは本当の幸せは得られない、というメッセージがじんわり心に響きます。にじうおが少しずつ成長していく姿に、子どもだけでなく大人も学ぶことが多いと感じました。キラキラ光るうろこは物語の象徴で、子どもたちも夢中になります。「ほんとうの豊かさってなんだろう?」と考えるきっかけになる素敵な1冊です。シンプルだけど深く、繰り返し読みたくなる名作です。