作・絵:マーカス・フィスター、訳:谷川俊太郎『にじいろのさかな うみのそこのぼうけん』(原題:Der Regenbogenfisch entdeckt die Tiefsee)は、2009年に講談社から発行されたシリーズ第5弾。仲間と分かち合って残った最後の1枚のうろこ。それが思わぬことで深海へ落ちてしまい、にじうおはその大切なうろこを追って、未知なる海の底へ冒険に出ます。不思議で美しい実在の深海生物たちが登場し、目を奪われる華やかさ!でも、にじうおは惑わされず、自分の「大切なもの」を見つけ出します。勇気と好奇心あふれる1冊です。
略歴
マーカス・フィスター
マーカス・フィスター(Marcus Pfister)さんは、1960年スイス・ベルン生まれの絵本作家・イラストレーターです。ベルンの美術学校でグラフィックデザインを学び、広告業界を経て絵本の世界へ。1992年に発表した『にじいろのさかな(原題:der regenbogenfisch)』が世界的な大ヒットとなり、現在では50か国以上で翻訳され、多くの子どもたちに愛されています。透明感のある美しいイラストが特徴で、水彩とホイル加工を組み合わせた独自の技法も魅力です。
谷川俊太郎(訳)
谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう, 1931年-2024年)さんは、東京生まれの詩人、翻訳家、絵本作家です。1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、その独創的で感受性豊かな詩風が注目を集めました。以来、詩だけでなく、絵本や脚本、翻訳など多岐にわたる分野で多才な才能と日本文学への多大な貢献を物語っています。
絵本分野では、レオ・レオニの『スイミー』や『フレデリック』の翻訳で知られ、その簡潔で美しい日本語訳が作品に新たな命を吹き込みました。また、絵本『もこ もこもこ』や詩画集『ことばあそびうた』など、自身のオリジナル作品でも多くの読者に親しまれています。
受賞歴も多く、読売文学賞(1983年)、野間児童文芸賞(1988年)、朝日賞(1996年)など、国内外で高く評価されました。晩年には国際的な詩の賞も受賞し、日本文学の世界的な地位向上にも寄与しました。詩を通じて日常の深さを表現し続け、2024年に永眠されました。その作品と影響は、今も多くの人々に愛されています。
おすすめ対象年齢
『にじいろのさかな うみのそこのぼうけん』の対象年齢は、3歳〜7歳ごろ。色鮮やかなイラストと、わかりやすいストーリーで、幼児から小学校低学年まで幅広く楽しめます。絵本としての読み聞かせはもちろん、深海の不思議な世界に触れるきっかけにもなります。
レビュー
にじうおがたったひとりで深海に挑む姿は、子どもたちが初めての世界に飛び込んでいく姿と重なります。美しい深海の生き物たちに目を奪われながらも、自分の本当に大切なものを見失わないにじうおの姿が素敵です。色彩のコントラストやきらきらしたうろこの表現も見応えあり。シリーズの中でも冒険心が強く、読み終わった後に「自分だったらどうするかな?」と考えさせられる1冊。子どもにも大人にも響く絵本です。