
『ディック・ウィッティントンとねこ』は、マーシャ・ブラウンによる絵本で、イギリスの昔話を基にしています。原作名は『Dick Whittington and His Cat』で、1950年にアメリカで発行されました。日本語版は松岡享子さんの翻訳により、2007年にアリス館から出版されています。物語は、孤児のディックが飼っていた猫を貿易船に出したことで成功を収め、ロンドン市長にまで上り詰めるという内容です。
略歴
マーシャ・ブラウン
マーシャ・ブラウン(Marcia Brown、1918年 – 2015年)は、アメリカ、ニューヨーク州ロチェスター生まれの著名な絵本作家であり、イラストレーターです。彼女は豊かな感性と独特の絵画スタイルで知られ、『三びきのやぎのがらがらどん』や『影ぼっこ』や『せかいいちおいしいスープ』など、多くの名作を生み出しました。マーシャ・ブラウンの作品は、文学性と芸術性の高さで評価され、カーネギーメダルや3度のコールデコット賞を受賞しています。特に、異なる文化や民話を題材にした作品が多く、読者に異文化理解を促しました。また、教育者としても活躍し、子どもたちへの読み聞かせを通じて、絵本の魅力を広めました。その生涯を通じて、彼女は絵本を通じて子どもたちの想像力を育むことに情熱を注ぎ、児童文学に多大な貢献をした作家であり、今もなお多くの人々に愛されています。
まつおかきょうこ(訳)
松岡享子(1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は、5歳から7歳程度の子どもたちに適しています。物語の内容や絵の表現がこの年齢層に理解しやすく、楽しめるものとなっています。
レビュー
本書は、貧しい少年ディックが猫の助けを借りて成功を収めるという、夢と希望に満ちた物語です。マーシャ・ブラウンの繊細で温かみのあるイラストレーションが、物語の世界観を豊かに表現しています。また、松岡享子さんの翻訳も自然で読みやすく、子どもたちに親しみやすい作品となっています。この絵本は、努力と幸運が結びついて成功をつかむというテーマを通じて、子どもたちに勇気と希望を与えることでしょう。