スペインのイラストレーター、マヌエル・マルソル作、中川ひろたか訳の『まひるのけっとう』は、原題フランス語版Duel au soleilのピクチャーブック。初版はスペインかフランスなど複数国で展開されていて、たとえばフランスの「Orecchio Acerbo」社からは2020年版が出ている。日本語版は2020年に光村教育図書より発行されました。冒頭、荒野で弓を構えるネイティブアメリカンと拳銃を構えるカウボーイが緊迫の決闘直前に並び構えるシーンからスタート。ところが、カウボーイの銃に一羽の鳥が止まり、それがコミカルなドタバタ展開の幕開け。緊張感たっぷりの西部劇のようでありながら、ことごとくその雰囲気が壊されていく新感覚の絵本で、見開きや「エンドクレジット」風の演出も映画っぽさを盛り上げます
略歴
マヌエル・マルソル
マヌエル・マルソルさんは、1984年スペイン・マドリード生まれの画家で絵本作家。広告やオーディオビジュアルコミュニケーションを学んだ後、児童書イラストの道へ進みました。2017年にはボローニャ国際児童図書展で国際イラストレーション賞を受賞し、世界的にも注目を集めています。『まひるのけっとう』はユーモアと映像的手法を融合した作風で評価されています。その他にも、カフカの「変身」や「ロビンソン・クルーソー」など名作のイラスト版を手がけており、国際的に活躍しています。
中川 ひろたか(訳)
中川ひろたかさんは1954年埼玉県生まれ。シンガーソングライター、絵本作家、保育士などさまざまな顔を持つクリエイター。1995年に『さつまのおいも』でデビュー。また『ないた』で日本絵本賞受賞。モー・ウィレムズ作品をはじめ、翻訳絵本も多く手がけ、独自のユーモアある語り口が魅力。さらに作曲された『世界中のこどもたちが』などの歌が、保育現場でも広く親しまれています。
おすすめ対象年齢
対象年齢はおおよそ5歳から小学校中学年くらいまで。言葉が少なくても、絵の流れやユーモアを感じ取れる構成なので、読み聞かせにもぴったり。静かな場面の変化を楽しめる、ちょっと大人っぽいセンスを持った子にもおすすめです。
レビュー
決闘の緊張感と、思わぬ展開の“ゆるさ”が最高に笑える!構えた銃に鳥が止まり、汽車の音が気を散らせ…次々に登場する“邪魔”が、どんどん決闘の意味を崩していく。この「何もしない」が勝手に展開していく感じがとてもおもしろい。絵の表情もすごく豊かで、セリフが少ない分、見ているこちらが想像で補完できるのも楽しい。争いって実はこんな風にくだらなく終わらせられるのかも?って思わせる、深くて笑える名作です!