『根っこのこどもたち目をさます』は、ヘレン・ディーン・フィッシュ作、ジビレ・フォン・オルファース絵、石井桃子訳による絵本です。原作はジビレ・フォン・オルファースによるドイツの絵本『Etwas von den Wurzelkindern』で、1906年にドイツで発行され、日本語版は、2003年に童話館出版から発行されました。本書は、春の訪れとともに土の中で目を覚ます根っこの子どもたちが、花や虫たちと共に地上で活動し、再び冬に備えて土の中に戻るまでの四季の移ろいを描いています。オルファースの可愛らしいイラストと石井桃子氏の美しい翻訳が魅力的な作品です。
略歴
ジビレ・フォン・オルファース(絵)
ジビレ・フォン・オルファース(Sibylle von Olfers)は1881年、ドイツの貴族オルファース家に生まれました。幼少期から自然や絵画への関心を深め、成長するとベルリン女子美術学校に進学し、本格的に絵を学びました。その後、彼女は修道院に入り、宗教生活を送りながら教育や芸術活動に取り組むというユニークな道を選びました。修道院では小学校で美術を教える一方、自身の創作活動も継続しました。彼女の作品は、自然を愛する心や生命の循環を繊細に表現したものが多く、その代表作として1906年に発表された『Etwas von den Wurzelkindern(根っこのこどもたち目をさます)』が挙げられます。この絵本は、春の訪れを土の中の根っこの子どもたちが目覚め、活動する様子を愛らしく描き、世界中の読者に親しまれています。彼女は1916年にわずか35歳で病気により亡くなりましたが、その短い生涯の中で、自然の美しさや生命の大切さを伝える絵本作家として確固たる地位を築きました。その作品は今なお、多くの人々に感動を与え続けています。
ヘレン・ディーン・フィッシュ(文)
ヘレン・ディーン・フィッシュ(Helen Dean Fish)はアメリカ出身の児童文学作家で、特に絵本の編集や翻訳の分野で知られています。彼女は1930年代から1950年代にかけて、多くの児童向け書籍の制作や翻訳に関与し、子どもたちが文学を通じて楽しみながら学べるよう尽力しました。代表的な業績の一つとして、ドイツの絵本作家ジビレ・フォン・オルファースによる『Etwas von den Wurzelkindern(根っこのこどもたち目をさます)』の英語版を手掛けたことが挙げられます。この作品を通じて、四季の移ろいや自然の美しさを多くの英語圏の読者に伝えることに成功しました。
石井 桃子(訳)
石井桃子(いしい ももこ、1907年 – 2008年)は、日本の児童文学作家・翻訳家で、子どもたちに優れた海外文学を紹介することに尽力しました。東京大学文学部を卒業後、出版社で働きながら翻訳を始め、やがて児童文学の世界で活躍するようになります。彼女は翻訳の名手として知られ、アメリカやヨーロッパの名作を日本語に翻訳し、多くの子どもたちに親しまれる作品を生み出しました。特に『クマのプーさん』や『ピーターラビット』シリーズの翻訳で高い評価を得ています。また、児童書編集者としても活動し、日本初の絵本専門出版社「岩波書店の岩波こどもの本」シリーズの立ち上げに携わり、質の高い絵本の普及に貢献しました。晩年には、自らの創作活動にも力を入れ、『ノンちゃん雲に乗る』などの作品で知られています。石井の翻訳は、原作の魅力を忠実に伝えるだけでなく、日本語の美しさを引き出し、親しみやすい表現を用いる点で評価されています。彼女の活動は、日本における児童文学の発展に大きく寄与し、現在も多くの読者に影響を与え続けています。彼女の業績は、日本と世界の子どもたちを繋ぐ架け橋として輝き続けています。
おすすめ対象年齢
『根っこのこどもたち目をさます』は、出版社の推奨として5歳以上が対象とされていますが、内容や表現から幅広い年齢層の子どもたちに楽しんでもらえる絵本です。特に、四季の移ろいを美しいイラストで描いているため、自然や季節に興味を持ち始めた幼児から小学生まで幅広く対応しています。
レビュー
『根っこのこどもたち目をさます』は、自然の営みと四季の移ろいを優しく描いた絵本です。オルファースの繊細で美しいイラストは、春の訪れを待ちわびる気持ちを高めてくれます。石井桃子さんの翻訳も、原作の雰囲気を損なうことなく、日本語の美しさを感じさせます。物語は、土の中で眠る根っこの子どもたちが春の準備をし、地上で花や虫たちと共に過ごし、再び冬に備えて土の中に戻るという循環を描いており、自然のサイクルや生命の営みを子どもたちに伝えるのに最適です。読み聞かせを通じて、親子で自然の素晴らしさや季節の変化を感じることができる一冊です。