いのちのたべもの/中川ひろたか

中川ひろたかさんが文を、加藤休ミさんが絵を担当した『いのちのたべもの』(2017年・おむすび舎)は、「食べること」の大切さを親子の会話を通して伝える食育絵本です。スーパーで夕ごはんの材料を買いながら、お母さんが教えてくれるのは「人のからだは食べたものでできている」というシンプルで大切なメッセージ。食べものの背景やいのちのつながりを、優しく、リアルに描いています。加藤休ミさんの色鉛筆で描かれた力強い食材の絵も印象的で、おいしさや命の重みが伝わってきます。

略歴

中川 ひろたか

中川ひろたかさんは1954年埼玉県生まれ。シンガーソングライター、絵本作家、保育士などさまざまな顔を持つクリエイター。1995年に『さつまのおいも』でデビュー。また『ないた』で日本絵本賞受賞。モー・ウィレムズ作品をはじめ、翻訳絵本も多く手がけ、独自のユーモアある語り口が魅力。さらに作曲された『世界中のこどもたちが』などの歌が、保育現場でも広く親しまれています。

加藤 休ミ(絵)

加藤休ミ(かとう やすみ)さんは1976年、北海道釧路市生まれ。独学でクレヨンやクレパスによるユニークな画法を編み出し、2010年頃から絵本を中心に作品制作をスタートしました。リアルでおいしそうな食べ物の描写や、クレヨンタッチの温かみある表現にこだわり、ビリケン出版から刊行された『ともだちやま』で注目を集めました。以降、偕成社の『きょうのごはん』や講談社の『おさかないちば』、福音館書店の『うどん できた!』など、多くの食べもの絵本で活躍中です。クレヨンとクレパスならではの柔らかさと躍動感のあるタッチが特徴で、展覧会も多数開催。子どもだけでなく大人も惹きつける魅力ある画家です。

おすすめ対象年齢

対象年齢はおおよそ4歳〜小学校低学年くらいがおすすめです。ストーリーは親子の会話形式で進み、身近な食べ物を題材にしているので、小さな子どもでも親しみやすい内容です。少しずつ「食べること」や「命」に目を向けるきっかけになる絵本です。保育園や家庭での読み聞かせにもぴったりです。

レビュー

夕ごはんの買い物を通して、食材のひとつひとつに命があること、そして自分の体はその命からできていることを知る――そんなシンプルで力強いテーマが、親子の自然な会話で描かれていて、とても心に残りました。加藤休ミさんの絵はリアルであたたかく、白菜などの素材が本当においしそう。スナック菓子との対比もユーモラスで、日常の中にある選択の大切さにも気づかされました。「いただきます」に込められた意味を、子どもと一緒に改めて考えたくなる絵本です。