鈴木まもるさんの『まえむき よこむき うしろむき』(1990年 金の星社)は、動物や植物、乗り物や日用品など、身の回りにあるさまざまなものを「前」「横」「後ろ」と違う角度から描いたユニークな絵本です。単に形を覚えるだけでなく、「あ、こんなふうに見えるんだ!」という発見が楽しく、子どもたちの想像力をふくらませてくれます。描かれているのはリアルでわかりやすいイラストなので、小さな子どもでもすぐに理解できます。視点を変える楽しさを知ることで、ものの見方が広がる一冊です。
略歴
鈴木 まもる
鈴木まもるさんは1952年東京生まれ。東京芸術大学工芸科を中退後、1980年に『ぼくの大きな木』で絵本作家としてデビュー。作品数は200冊以上にのぼります。1995年に「黒ねこサンゴロウ」シリーズで赤い鳥さし絵賞を、2006年に『ぼくの鳥の巣絵日記』で講談社出版文化賞絵本賞、2015年には『ニワシドリのひみつ』で産経児童出版文化賞JR賞など数々の受賞歴あり。伊豆半島に在住し、画家・絵本作家として活動する傍ら、鳥の巣研究家として収集・展覧会・講演なども行っています。
おすすめ対象年齢
『まえむき よこむき うしろむき』は、3歳ごろから小学校低学年くらいまでの子どもにおすすめの絵本です。まだ形や物の認識が育ちつつある小さな子にとっては、新しい視点を発見するワクワク感があり、就学前の子どもには観察力や発想力を育てるきっかけになります。親子で一緒に「これはなに?」と考えながら読むのも楽しい時間になりそうです。
レビュー
この絵本を読んでみて、一番おもしろいのは「見慣れたものが角度によって全然ちがう姿になる」という発見の楽しさでした。前から見ると分かりやすいけれど、横や後ろから見ると「え、これなんだろう?」とちょっと迷う感じが子どもの好奇心を刺激します。ページをめくるごとに「ほんとだ!」と新しい気づきがあり、思わず親子で盛り上がれます。シンプルだけど奥が深く、絵の力で伝える鈴木まもるさんらしい工夫が光る一冊だと思いました。観察の視点を変える大切さを自然に学べるのも魅力です。


