『ジャイアント・ジャム・サンド』は、ジョン・ヴァーノン・ロード作、安西徹雄さんが翻訳した絵本で、原題は『The Giant Jam Sandwich』です。1972年にイギリスで発行され、日本では1976年に出版されました。物語は、400万匹のハチの大群に襲われたチクチク村の人々が、巨大なジャムサンドを作ってハチを捕らえるというユーモラスな展開です。村人総出でパンを焼き、ジャムを塗り、サンドイッチを完成させる過程が細かく描かれ、そのスケールの大きさと奇想天外なアイデアが魅力的です。
略歴
ジョン・ヴァーノン・ロード
ジョン・ヴァーノン・ロード(John Vernon Lord、1939年生まれ)は、イギリスの著名なイラストレーター、作家、教育者です。幼少期をパン屋の息子として過ごし、この経験が後の作品に影響を与えました。セントラル・セント・マーチンズを卒業後、イラストレーターとしてのキャリアを開始し、『イソップ物語』やエドワード・リアの『ナンセンス詩集』、フォリオ・ソサエティ版『英国諸島の神話と伝説』など、多くの古典作品の挿絵を手掛けました。また、ルイス・キャロルやジェイムズ・ジョイスの作品にも挿絵を提供しています。自身で執筆・イラストを担当した児童書も多く、その中でも『ジャイアント・ジャム・サンド』(1972年)は代表作として知られ、複数の言語に翻訳されています。教育者としては、1961年からブライトン大学で教鞭を執り、1986年にイラストレーション学科の教授に就任、2000年には名誉教授の称号を授与されました。長年にわたり、イラストレーションの技術と芸術性を次世代に伝えることに尽力し、ヴィクトリア&アルバート博物館挿絵大賞など、多くの賞を受賞しています。
安西 徹雄(訳)
安西徹雄さん(あんざい てつお、1933年 – 2008年)は、日本の英文学者、翻訳家、演出家であり、上智大学名誉教授を務めました。愛媛県松山市出身で、愛媛県立松山東高等学校時代の友人に伊丹十三さんがいます。1958年に愛媛大学文理学部を卒業し、上智大学大学院文学研究科に進学。1965年に博士課程を中退し、上智大学の講師となりました。1970年に助教授、1978年に教授に昇進し、2003年に定年退職後、名誉教授の称号を受けました。専門はイギリス文学、特にウィリアム・シェイクスピアの研究で、多くの翻訳や研究書を執筆しています。1975年には芥川比呂志さんらと演劇集団「円」の創立に参加し、シェイクスピア作品の翻訳・演出を手掛けました。また、児童文学の翻訳にも力を入れ、『ジャイアント・ジャム・サンド』など、多くの作品を日本語に翻訳しています。
おすすめ対象年齢
この絵本の対象年齢は、おおよそ4歳からとされています。リズミカルな言葉遣いとユーモラスなイラストが、小さな子どもたちの興味を引く内容となっています。また、村人たちが協力して問題を解決する姿勢は、幼児期の子どもたちにとって良い学びの機会となるでしょう。
レビュー
本作は、奇想天外な発想とスケールの大きさが魅力的で、読み手を引き込む力があります。特に、村人たちが協力して巨大なジャムサンドを作り上げる過程は、細部まで丁寧に描かれており、読者の想像力をかき立てます。また、リズミカルな文章とユーモラスなイラストが相まって、子どもだけでなく大人も楽しめる作品です。読み終えた後には、思わずジャムサンドが食べたくなるような、食欲をそそる絵本でもあります。