原題は Goodnight, Me。著者はオーストラリア生まれのアンドリュー・ダッド、絵はエマ・クエイが担当。初版は2005年にオーストラリアで刊行。日本語版は2020年、クレヨンハウスから発行された『おやすみ、ぼく』(訳:落合恵子さん)です。眠る前に「おやすみ」を体の各部にかけていくリズミカルなストーリーで、“おなか、おしり、耳…”と思わずクスッと笑いつつもゆったりモードに。作者たちが込めた温かな眼差しと訳者の優しい言葉づかいが、からだとこころをふわっとほどいてくれる。今日一日ありがとう、そして明日もよろしくね、の気持ちが込められた、まるで柔らかい毛布みたいな絵本です。
略歴
アンドリュー・ダッド
アンドリュー・ダッド(Andrew Daddo)はオーストラリア出身の作家、コラムニスト、テレビ司会者など多才な活動で知られています。テレビではMTV や Lonely Planet の番組に出演し、ラジオ番組のホストも務め、Sydney’s ABC などでも活躍。著書は子ども向けから大人向けまで多数あり、絵本も手がけています。『おやすみ、ぼく』は身体の各部に“Good night”と語りかけていくユニークな構成で、親子の就寝儀式をほっこり描いた作品として幅広い支持を得ています。
エマ・クエイ(絵)
エマ・クエイ(Emma Quay)はイギリスのケンブリッジ近郊で育ち、現在はオーストラリア・シドニーを拠点に活躍するイラストレーター&作家です。版画とイラストのホナーズ学位取得後、数々の児童書を手がけ、代表作には『Rudie Nudie』『Bear and Chook』『Daddy’s Cheeky Monkey』などがあります。『おやすみ、ぼく』はオーストラリアでベストセラーとなり、カラフルでやさしい色彩と、やわらかなタッチの絵が、多くの子どもと大人の心をつかんでいます。2006年にはCBCA(オーストラリア児童図書協会)の Early Childhood 部門で「Notable Book」に選ばれました。
落合 恵子(訳)
落合 恵子さんは、日本の著名なエッセイスト・司会者・翻訳家で、子どもの本の翻訳も数多く手がけています。テレビ番組の司会を長年務める一方、児童文学の紹介や朗読活動を通じて、多くの親子に読書の魅力を届けてきました。『悲しみのゴリラ』の訳も、繊細な感情に寄り添いながら、自然で丁寧な日本語へと紡ぎ出しています。やさしく、子どもの目線に立った訳語選びが読む者の心に響きます。
おすすめ対象年齢
この絵本は主に0〜4歳くらいの乳幼児が対象です。短いフレーズと反復のあるリズム、やわらかく親しみやすい絵柄が特徴で、ベッドタイムの読み聞かせにぴったり。言葉を覚え始めた幼児にも、語りかけながら「おやすみ」の習慣を伝えやすく、大人と子どものコミュニケーションにもぴったりな一冊です。
レビュー
読んでいて、まるで優しい子守唄を聴いているみたいな心地に。オランウータンのぼくが「おやすみ」を体のあちこちにかけるたびに、くすっと笑えて、それでいて静かな幸福感がじんわり。訳・落合恵子さんの言葉選びがまた絶妙で、子どもだけでなく大人の私も心がほぐれました。身体のパーツごとに声をかけるうちに、自分の体と心が「今日もよくがんばったね」と労られている気がして、深呼吸したくなる。日常の終わりに「ありがとう」と「明日もよろしくね」をそっと込める温かい時間。大切な誰かに、そして自分自身に読みたい、布団の中で心がほどけていくような絵本でした。