ぐりとぐらのおきゃくさま/なかがわりえこ

『ぐりとぐらのおきゃくさま』は、なかがわりえこ作、やまわきゆりこ絵による絵本で、1967年に福音館書店から出版されました。物語は、森で大きな足跡を見つけた野ねずみの「ぐり」と「ぐら」が、その足跡をたどって自分たちの家に戻ると、見知らぬお客さまが待っているという展開です。この作品は、クリスマスをテーマにした心温まるストーリーで、多くの読者に親しまれています。

略歴

なかがわ りえこ

なかがわりえこ(中川 李枝子、1935年生まれ)は、日本を代表する児童文学作家であり、絵本作家としても広く知られています。北海道札幌市に生まれ、幼少期から自然に親しむ環境で育ちました。東京都立高等保母学院(現・都立高等保育学院)卒業し、保育士として働き始めました。この経験が、後の創作活動に大きな影響を与えています。
保育士時代に子どもたちへの読み聞かせや遊びの中で得た知識を活かし、1962年に『いやいやえん』で作家デビュー。1963年には、イラストを実妹の画家・山脇百合子(旧姓・大村)が担当した『ぐりとぐら』を発表し、広く支持を集めました。特に「ぐりとぐら」シリーズは、親しみやすい文章と温かみのある物語が特徴で、世代を超えて愛される作品となっています。
その後も数々の絵本や児童書を手がけ、子どもの目線に寄り添った物語を紡ぎ続けています。『そらいろのたね』『ももいろのきりん』など、多くの作品を発表しました。また、1988年公開のスタジオジブリの映画『となりのトトロ』では、オープニングテーマ「さんぽ」の作詞を手がけました。作品を通じて、自然や友情、日常の小さな喜びを大切にするメッセージを伝え、多くの人々に影響を与えてきました。

やまわき ゆりこ(絵)

やまわきゆりこ(旧姓:大村百合子)さんは、1941年、東京府(現・東京都)に生まれました。東京都立西高等学校を経て、上智大学外国語学部フランス語科を卒業。高校3年生のときに童話の挿絵を手掛けたことがきっかけで、絵本作家としての道を歩み始めました。姉である中川李枝子さんとの共作で「ぐりとぐら」シリーズや『そらいろのたね』など、多くの作品を世に送り出しました。1967年に『ぐりとぐらのおきゃくさま』で厚生大臣賞を受賞し、2013年には菊池寛賞を受賞しています。2022年80歳で永眠されました。

おすすめ対象年齢

『ぐりとぐらのおきゃくさま』の対象年齢は、読み聞かせの場合は3歳から、自分で読む場合は小学校低学年からがおすすめとされています。物語の内容や絵の表現が幼児にも理解しやすく、また文字数も適度であるため、この年齢層に適しています。

レビュー

『ぐりとぐらのおきゃくさま』は、クリスマスの特別な雰囲気が詰まった心温まる絵本です。雪が降る森の中で、大きな足跡を見つけたぐりとぐらが、その足跡をたどって自分たちの家へ戻ると、意外な訪問者が待っているという展開がとても魅力的です。物語のテンポも良く、子どもたちは「お客さまは誰なの?」というワクワク感を持ちながらページをめくることができます。やまわきゆりこさんの絵は、雪景色の静けさや、クリスマスの雰囲気を見事に表現しています。特に、サンタクロースさんが作る大きなケーキの場面は、読者にも幸福感を与えます。絵の細部には遊び心があり、何度読んでも新たな発見があるのも魅力です。この絵本は、クリスマスを迎える楽しみや、誰かと一緒に過ごす喜びを伝えてくれます。小さな子どもから大人まで、幅広い世代が楽しめる名作だと改めて感じました。