『くいしんぼうのはなこさん』は、いしいももこさん作、なかたにちよこさん絵による昭和の名作絵本。1965年に初版が刊行されました。お話は牧場で育ったわがままな子牛・はなこさんが、ごちそうを独り占めしてどんどん大きくなり、ついにはアドバルーンみたいにむくむく膨らんじゃう…!ガス抜き治療で元に戻るまで、大笑い&ドキドキの展開が止まりません。クレヨンタッチの絵と、緩やかだけどパンチの効いたストーリーが、1960年代から現代まで愛され続ける理由。牧歌的な雰囲気で読みやすく、親子の読み聞かせにもぴったりです。
略歴
石井 桃子
石井桃子(いしいももこ、1907 – 2008)さんは、日本の児童文学作家・翻訳家で、子どもたちに優れた海外文学を紹介することに尽力しました。東京大学文学部を卒業後、出版社で働きながら翻訳を始め、やがて児童文学の世界で活躍するようになります。彼女は翻訳の名手として知られ、アメリカやヨーロッパの名作を日本語に翻訳し、多くの子どもたちに親しまれる作品を生み出しました。特に『クマのプーさん』や「ピーターラビット」シリーズの翻訳で高い評価を得ています。また、児童書編集者としても活動し、日本初の絵本専門出版社「岩波書店の岩波こどもの本」シリーズの立ち上げに携わり、質の高い絵本の普及に貢献しました。晩年には、自らの創作活動にも力を入れ、『ノンちゃん雲に乗る』などの作品で知られています。彼女の翻訳は、原作の魅力を忠実に伝えるだけでなく、日本語の美しさを引き出し、親しみやすい表現を用いる点で評価されています。彼女の活動は、日本における児童文学の発展に大きく寄与し、現在も多くの読者に影響を与え続けています。彼女の業績は、日本と世界の子どもたちを繋ぐ架け橋として輝き続けています。
中谷 千代子(絵)
中谷千代子(なかたに・ちよこ)さんは、1930年、東京府(現・東京都)高樹町に生まれました。東京府立第十一高等女学校を経て、1952年に東京美術学校(現・東京藝術大学)油絵科を卒業。学生時代に梅原龍三郎に師事し、詩人・岸田衿子さんとは学び舎の同期だったそうです。1957年ごろから絵本制作に興味を持ち、1960年に『ジオジオのかんむり』でデビュー。以降『かばくん』『かばくんのふね』など、動物が主役の絵本を多数手がけ、講談社出版文化賞や産経児童出版文化賞などを受賞しました。1963年には夫・貞彦さんとともにフランスへ渡り、絵本制作の研鑽を積みます。1981年に永眠されました 。
おすすめ対象年齢
対象は親子の読み聞かせにぴったりの3歳〜小学低学年。一部では「自分で読むなら小学低学年」とされていますが、4〜5歳児でも物語の面白さやオチの妙をじゅうぶん理解できる内容です 。少し長めの文章と豊かな表現で、語彙力アップにもつながります。
レビュー
牛の世界の“女王” はなこさんが「みんな、ちょっとおまち!」と牧場のみんなに堂々と言い放つシーン、もう最高です!くいしんぼうで、あれもこれもとほぼ独占するうちに、ついにはアドバルーンみたいにむくむく膨らんでインパクト抜群!でも、最後は獣医さんの力でしゅーっとガスを抜かれ、反省したのか、もうわがままは言わないように…。笑えるのに、ちょっぴり考えさせられる結末が印象的。ユーモアと教訓がバランスよく詰まった、何度も読みたくなる一冊です。