『うさこちゃんとたれみみくん』は、オランダ出身の絵本作家ディック・ブルーナが文・絵を担当し、松岡享子さんが日本語訳をしています。日本語版は2008年に福音館書店から初版が発売されました。お話は、ある日片耳がたれている転校生・だーんがクラスにやってくるところから始まります。みんなは彼を「たれみみくん」と呼びますが、うさこちゃん(ミッフィー)は心配に…。思いやりと勇気の成長ストーリーです。
略歴
ディック・ブルーナ
ディック・ブルーナ(Dick Bruna、1927年〜2017年)は、オランダ・ユトレヒト生まれの絵本作家・グラフィックデザイナー。父の出版社でデザインの仕事をするかたわら、1953年ごろから絵本制作を開始。代表作は「うさこちゃん」シリーズで、世界的に知られるキャラクター「ミッフィー(nijntje)」を誕生させました。ミニマルな線と明快な色づかいで、子どもから大人まで長く愛されています。著作は50か国以上で翻訳され、総発行部数は8500万部以上にのぼります。
松岡 享子(訳)
松岡享子(まつおかきょうこ,1935-2022)さんは、日本の児童文学研究者、翻訳家、図書館司書です。神戸女学院大学を卒業後、ウェスタン・ミシガン大学で修士号を取得されました。帰国後は、福音館書店に勤務し、東京都立日比谷図書館で児童サービスにも携わられました。1974年には「東京子ども図書館」を設立し、児童書の普及に尽力されました。代表作に『とこちゃんはどこ』『おふろだいすき』、また、『しろいうさぎとくろいうさぎ』や「くまのパディントン」などの翻訳も手掛けられました。著作・翻訳は200冊以上にのぼり、文化功労者としても顕彰され、児童文学の発展に大きく貢献されました。
おすすめ対象年齢
公式情報によると、「読んであげるなら3歳から、自分で読むなら小学低学年から」が目安です。実際、3歳くらいの幼児にも「あだ名って、ちょっと考え物だよね」と気づきがあるようで、低学年になると文字が読める子なら自分でじっくり読み解くこともできます。シンプルな絵と文、そして「人の気持ちに寄り添う」テーマが、年齢を問わず響く1冊です。
レビュー
この絵本、うさこちゃんの優しさと、だーんの本音がとても胸に染みました。短いお話なのに、外見へのあだ名や無意識の偏見に対して「やめようよ」と声を上げる勇気を、親しみやすいキャラとシンプルな絵で伝える構造が完璧。子どもにも大人にも「考えさせられる」内容ですが、説教臭くないのがすごい。私も、誰かを傷つけていないかな…なんて振り返りたくなります。色数を絞ったブルーナさんのデザインも安心して絵本に集中でき、うさこちゃんシリーズのなかでも一際、社会的なメッセージ性が強い一冊だと感じました。