しあわせの王子/オスカー・ワイルド

オスカー・ワイルド原作、いもとようこさんによる絵と訳が施された美しい絵本『しあわせの王子』は、自己犠牲と真の愛についての物語です。原作名は”The Happy Prince”(1888年イギリスで発表)で、19世紀の名作として知られています。町の貧しい人々を助けるために自らの美しさを捧げる「しあわせの王子」と、小さなツバメの友情と献身が描かれています。いもとようこの柔らかく温かみのあるイラストは、物語の深い感動を一層引き立てています。日本語版の発行は2007年、日本の読者にも広く親しまれています。

略歴

オスカー・ワイルド

オスカー・ワイルド (Oscar Wilde)は1854年、アイルランド生まれ。トリニティ・カレッジとオックスフォード大学で学び、文学に才能を開花。『しあわせの王子』を含む短編集(1888年)や『ドリアン・グレイの肖像』(1890年)、『真面目が肝心』(1895年)などで名声を得る。「唯美主義」を掲げ、美と芸術を重んじた。1895年に同性愛を理由に投獄され、評判を失うも、出獄後も創作を続けた。1900年、パリで46歳で死去。作品は今も世界中で親しまれている。

いもとようこ

いもとようこさん(本名:井本蓉子)は、1944年兵庫県生まれの絵本作家・挿絵画家です。金沢美術工芸大学油絵科を卒業後、小学校教員を経て絵本の世界に入りました。独自の貼り絵技法で温かみのある作品を多数手がけ、出版された絵本は400冊以上にのぼります。主な受賞歴として、1985年度『ねこの絵本』、1986年度『そばのはなさいたひ』でボローニャ国際児童図書展エルバ賞を2年連続受賞しています。ちぎった和紙の貼り絵に着色する独自の技法で、柔らかく温かな表情の人物や動物を描き、創作童話や日本の昔話、世界の名作など多くの絵本を手がけ国際的にも高く評価されています。

おすすめ対象年齢

対象年齢は主に3歳から6歳頃となっています。しかし、小学校低学年から大人にも幅広くおすすめです。6歳以上の子どもたちは物語の優しいメッセージを理解しやすく、10歳以上の読者や大人はその深いテーマに感銘を受けることでしょう。親子で一緒に読んで話し合うのにも最適な絵本です。

レビュー

この絵本は、オスカー・ワイルドの物語が持つ深いテーマを、いもとようこの柔らかで温かみのあるイラストが見事に表現しています。美しい王子像とツバメの献身的な行動は、読者の心に強い印象を残します。特に、他者を思いやることの尊さや自己犠牲が持つ真の価値を感じさせてくれる点が素晴らしいです。物語の終盤では感動的な展開が待ち受けており、読み終えた後に心が温かくなる一冊です。子どもたちにも大切な価値観を伝え、大人にとっても再発見の喜びを与えてくれる貴重な絵本だと感じました。

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