
『うみべのハリー』は、ジーン・ジオン作、マーガレット・ブロイ・グレアム絵、わたなべしげお訳による絵本です。原作のタイトルは『Harry by the Sea』で、1965年にアメリカで発行されました。日本語版は福音館書店より1967年に出版されています。物語は、犬のハリーが家族と海水浴に出かけ、さまざまな冒険を繰り広げる様子を描いています。ハリーが海岸で遊ぶ人々を次々に驚かせるユーモラスな展開が魅力です。
略歴
ジーン・ジオン
ジーン・ジオン(Gene Zion、1913年 – 1975年)はアメリカの児童文学作家で、特に絵本『どろんこハリー(Harry the Dirty Dog)』シリーズで広く知られています。ニューヨークで生まれ育ち、デザインと美術のバックグラウンドを持っていた彼は、戦時中はアメリカ陸軍に従軍し、その後はデザイン会社で働くようになりました。絵本作家としてのキャリアを本格的にスタートさせたのは、妻のマーガレット・ブロイ・グレアムと協力した作品がきっかけです。ジーン・ジオンは、動物や子供たちの視点からユーモラスに日常生活を描くことに長けており、独特の温かさと親しみやすさが作品全体にあふれています。彼が手掛けた絵本の多くは、マーガレット・ブロイ・グレアムが挿絵を担当し、特に「どろんこハリー」シリーズは大きな成功を収めました。この作品は世界中で翻訳され、数世代にわたって愛されています。彼の作品は、シンプルな文体と温かみのある物語で、子供たちに「家族」「冒険」「発見」といった普遍的なテーマをわかりやすく伝えています。
マーガレット・ブロイ・グレアム(絵)
マーガレット・ブロイ・グレアム(Margaret Bloy Graham、1920年生まれ)は、カナダ出身の絵本作家・イラストレーターです。トロント大学で美術を学び、卒業後はニューヨークに移住しました。1956年、ジーン・ジオン(Gene Zion)と共に制作した『どろんこハリー(Harry the Dirty Dog)』で広く知られるようになりました。この作品は、汚れることが大好きな犬ハリーの冒険を描いており、子供たちに愛されています。グレアムは、ジオンとのコラボレーションで多くの作品を手掛け、彼女自身も作家として活動しました。彼女のイラストは、シンプルでありながら感情豊かで、物語に命を吹き込むと評価されています。
わたなべしげお(訳)
渡辺茂男(わたなべしげお,1928年 – 2006年)さんは、日本の児童文学者、翻訳家です。静岡県静岡市葵区生まれ。静岡県立静岡商業学校、久我山工業専門学校を経て、慶應義塾大学文学部図書館学科を卒業後、米国のウェスタン・リザーブ大学大学院を修了しました。ニューヨーク公共図書館児童部勤務を経て、1975年まで慶應義塾大学文学部図書館学科教授を務めました。石井桃子さんを中心とする「ISUMI会」に携わったことがきっかけで、児童文学に関わるようになりました。日本国際児童図書評議会(JBBY)創立に尽力し、『寺町三丁目十一番地』で1969年に厚生大臣賞、1970年にサンケイ児童出版文化賞を受賞しました。
おすすめ対象年齢
『うみべのハリー』の対象年齢は3歳以上です。シンプルで親しみやすい文章とユーモラスな展開が小さな子どもにも理解しやすく、読み聞かせに適しています。絵の表情や動きからもストーリーを楽しめるため、言葉を覚え始めた幼児にもぴったりです。また、ハリーの冒険は年齢が上がっても面白く感じられるため、5〜6歳の子どもが自分で読む絵本としても楽しめます。
レビュー
『うみべのハリー』は、ハリーの好奇心旺盛で愛らしい性格が存分に描かれており、子どもたちだけでなく大人も楽しめる作品です。海辺での出来事がユーモラスに展開され、読者を飽きさせません。マーガレット・ブロイ・グレアムの柔らかいタッチのイラストレーションは、物語の雰囲気を一層引き立てています。ハリーの冒険を通じて、家族や友人との絆の大切さを感じさせる心温まる作品です。